割り下在りき

三社祭の最中ですので、予約投稿にておはようございます。

さてイキナリ重厚な話題ですが、「ちんや」のすき焼きは、まず最初に「牛在りき」でしょうか。

このブログの読者の皆さんなら、そうではないことをご存知かと思います。

牛の産地は日によって違っています。

どこそこという産地にこだわってはいないです。ほとんどのブランドが玉石混淆だからです。

では、どのような牛を仕入れるのでしょうか。

「ちんや」の割り下に合う牛です。

そう、「ちんや」のすき焼きは、「割り下在りき」で、その味に合う牛を仕入れるのです。

ご存知の通り「ちんや」の割り下は甘さが濃いのが特徴です。割り下だけ飲むのが難しいほど甘いのですが、それを使って肉を煮て食べていただくと、皆さんたいてい、

甘いけどあっさりとした甘さだ、とか、穏やかな甘さだ。

とかおっしゃいます。

このように「あっさり」と感じる理由は、肉の濃い旨みと割り下の濃い味がバランスしているからです。

そう、旨みのしっかりある肉でないと×なのでして、旨みの乏しい肉の場合、やたらと甘辛く感じてしまいます。

だって、元々甘辛いんですから。

だから肉の旨みがしっかり感じられるまで、牛を長期肥育して貰う必要があります。若いメスではダメなんです、はい、牛に限っては。

もとい。

また肉の脂肪が良く融けないといけません。脂の融け方が速いと、口の中で割り下と混ざって美味しく感じますが、融けが遅いとそうはなりません。

脂肪が良く融けるように牛を育てるには、飼料に気を遣い、やはり長期肥育する必要があります。またそれ以前に性別が雌である必要があります。特定の血統を選ぶ必要があることも知られています。

・・・と色々書きましたが、要するに「割り下在りき」で、それから牛なのです。

そこに「ちんや」の大きな特徴があるのですが、それを現状では広報しきれていないかもしれません。

取材などでは詳しく説明していますが、たいていの記者さんは「牛在りき」の発想しか持っておいででなく、伝わらないことも多いです。

今後は、何か割り下に焦点が当たるような方法を考えないといけないですね。

例えば、浅草らしいネーミングを考えて、割り下に名を付けてしまうとか。商標を獲ればさらに良いですね。

そうですねえ・・・

「デンキ割り下!」

え? パクリは良くないぞ って?!

はい、そうでした、神谷さん。

追伸

ムック本『江戸っ子に学ぶ! 浅草本』に載せていただきました。ありがとうございます。

 「枻(えい)出版社」刊行、エイムック2855。

<内容>浅草寺を中心に発展してきた“浅草”は、江戸の文化と今が混在する街で、歴史とグルメと情緒を肌で感じる場所がそこかしこにあります。100年、200年と続く老舗のうなぎ、どぜう、そば、天ぷら、すき焼など和のお店をはじめ、絶妙の味を伝える洋食屋さんや女性にとって嬉しい甘味処など目白押しです。いっぽう、かっぱ橋周辺に足を伸ばせば、木札や手ぬぐい、櫛といった職人の技が織りなす伝統の工芸品に出会うことができます。そこで本書は、浅草をまるごと楽しむために「食・技・遊・祭」の4つを徹底的に紹介しました。また巻頭では、浅草在住のたいとう観光大使をつとめる、なぎら健壱さんといとうせいこうさんに登場をいただき、浅草の魅力を語っていただきました。

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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.539日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)