私の本『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』が今月25日に出ることになりまして、その前日つまり明日、メデイア向け・書店向けの披露会を開催することになりました。
ですので、5分程度で著者挨拶などというものをしないといけません。
<以下のようなことをお話ししようかと思います>
本日は、私の本の披露会に大勢様ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本の概要につきましては版元の「晶文社」さんから説明がございましたので、私からはこの本を企画した経緯や、この本への想いといったことをお話ししたいと思います。
さて、この本は一言で申しますと、浅草の戦後七十年史です。昭和9年(1934年)から昭和18年(1943年)の間に生まれて、今日までお店を守って来た方々にインタビューすることによりまして、その七十年を辿ろうというのが今回の企画ですが、そのような企画を思いつきましたのは、その方々と同世代の身内を、最近私が失くしたからです。昭和14年(1939年)生まれの、私の母のことです。昨年の7月9日に他界致しました。
亡くなってしまいますと当然のことながら、何か聞きたいことがありましても、聞けません。是非今の内に聞いておこうと思い立った次第です。
比べてみますると、戦後の記憶よりも戦争そのものの記憶は、良く記録されていると思います。実は、私の大学時代の恩師・白井厚先生が「学徒出陣」で出征した元学生にインタビューして、『証言太平洋戦争下の慶應義塾』(慶應義塾大学出版会、2003年)といった本を出されていますが、今回の本は、その戦後浅草版を狙ったものです。
日本の戦後と申しますと、松下幸之助・本田宗一郎・盛田昭夫といった人達が代表するのだろうと思いますが、浅草の戦後を担った方々のことも是非記録しようというのが、今回の本の大きな眼目です。
母が亡くなるまでの経緯は、ここに書いてございますので、まずそれをお読みいただきましてから、それから今回の本に入っていただけましたら、大変在り難いと思っております。
次に、戦後の浅草のことを聞くのに、何故この方々か、という点をお話ししたいと思います。さし当たって、昭和10年(1935年)生まれの私の父から「自分が抜けているぞ」というクレーム(笑い)が来ておりますが、それに対する返事としましては、肉屋をやって来て肉が仕入れられなくて弱ったという経験はしなかったでしょ!どじょう屋さんは昭和30年代にどじょうが手に入らなくなって、とても苦労なさったんだよ!だからそういう人に本に入っていたたいたんだよ、というのが返事であります。
その他の皆さんも個別の業界で、戦後復興だけでないご苦労がありました。神輿屋さんは前回の東京オリンピックの頃に、日本人が祭りを忘れてしまって→神輿の注文が全く入らないという経験をなさいました。鮨の世界では昭和30年代に冷温流通の発達で鮨の形態が大きく変わるという経験をなさいました。花柳界や和装といった「和もの」の世界では、ごく最近まで市場規模が小さくなり続けるという経験をなさいました。
そして公園六区を中心とする浅草西部の興行界では、1970年代にテレビの発達の影響で、劇場の大半が閉鎖に追い込まれるという経験をなさいました。戦後浅草で一番ご苦労なさったのは六区の方々でしょう。ですので、そういう方々にこの本に入っていただきました。
このように、この本は単なる浅草の戦後復興の話しではありません。老舗の継承の物語でもありまして、浅草にご興味のない方々~例えば、町工場の社長の子として生まれ、将来親父の跡を継いだものかどうか、迷っているような若い方にも興味を持っていただけるものと確信しております。
ですので、今回の本はカテゴリーとしては、「紀行・トラベル」に入ってはおりますが、ビジネス本として読んでいただくのも悪くないのではないか、そう考えております。どうぞ、そのように報道していただけましたら幸いです。
最後になりましたが、このような貴重な機会をお与え下さいました版元の「晶文社」さん、ライターの藤井さん、カメラの山口さん、スタイリングの竹岡さん、バーの皆さん、そして何より対談相手の皆さんに心より御礼申し上げます。また、私がこの本の仕事に従事している間「ちんや」の店を運営してくれた、店のスタッフと妻にも御礼を言いたいと思います。本当ありがとうございました。以上で簡単ではありますが、私の挨拶を終わります。ありがとうございました。
<書籍データ>
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
第五話は「芸どころ浅草の花柳界を支える」(割烹家「一直」六代目 江原仁さん)。対談場所は「フラミンゴ」です。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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