サイレンス車両

その試みが、どうなって行くのか、私は注目したいと思っています。

「試み」とは、 京都の「都タクシー」さんの「サイレンス車両」。この車両では、ドライバーさんから客への声かけ、つまり雑談を極力控えるのだそうです。

その「サイレンス車両」が現在「試験走行中」なのだそうですが、好評かと思いきや、反対意見も多いとか。

「目的地まで何も会話がないというのはあまりにも不愛想な気がする」

「無口な人のタクシーに乗る方が嫌」

「運転手はロボットじゃない」

「その場の判断で良いじゃない。何でもルールはやめて」

「そんな事にまで気を配らなければならないなんて、面倒くさい時代だな」

タクシー移動中にメールの処理をしたい時とか、雑談したくない場合も確実にありますから、ニーズはあるはずですが、そういうお客さんとのマッチングは、実際問題なかなか難しいのかもしれません。

私は基本的に、店と客との絆が大切だと言って来ましたが、「サイレンス車両」は基本的に支持したいと思っています。

まずニーズが間違いなくあります。

それから、ドライバー確保という点でも有効かと思われます。「運転は上手だが雑談が苦手」というドライバーさんが「サイレンス」なら安心して働けると思います。

逆に雑談好きな場合は「雑談タクシー」として、別途売り出すのが良ろしかろうと思います。

もちろん、その場合は「舌禍事件」を覚悟しないといけません。私の知人には都内の有名料理店の経営者がいますが、ある時私の乗ったタクシーの運ちゃんが、ある一軒を罵り始めました。本人としては辛口グルメ自慢のつもりだったのかもしれませんが、経営の苦労を何一つ知らない、赤の他人に言われたくはないと思い、私は、酔っていたせいもあり、怒ってその車を降りてしまいました。

あの運ちゃんこそ、「サイレンス」に人事異動した方が良いですね。そう、舌禍ドライバーの処遇としても有効と思いますね。

都タクシーさん、頑張って下さい。

 

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.680日連続更新を達成しました。

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顧客志向

昨日の続きです。

「肉屋の仕事をしている肉屋」は「顧客志向の肉屋」で、「顧客志向の肉屋」だから、その前提で脂のことを考えた結果、「適サシ肉宣言」が出来たのだと、昨日申しました。

100年経営研究機構」の先生がたも、老舗の特徴は顧客志向だと言っておられます。

では顧客志向って、何ですか?

値段が安い方が顧客は喜ぶのだから、

顧客志向とは、やっぱ安いことだよね!

やっぱコスパだね!

と考える人達がおいでです。その考え方で「ちんや」を観ると、安くはないので顧客志向に見えないかもしれません。

私は、お客様に「銭失い」をさせないことが顧客志向だと考えています。

古来申しますように「安物買い」は「銭失い」です。

食べ物の機能には、

1人の胃袋を満たすことと

2人の心を満たすこと

の二つがありますが、多少の金をケチったばかりに、肉から1しか得られないことがあります。「多幸感」を与える成分が少ない肉の場合に、そうなります。最近そういう肉が実に多いです。

その場合は、せっかくの食事が楽しくない状態で終わるのです。胃袋は膨れますけどね。つまり、多少の金をケチったばかりに「銭失い」をしてしまう状況です。

お客様に「銭失い」をさせるような肉を売らないこと、それが弊店の顧客志向だと私は考えています。

このように「銭失いをさせない肉屋」だからこそ「肉屋の仕事をしている肉屋」に成るのであり、「適サシ肉宣言」も出来たのだと申せます。

お分かりいただけたら嬉しいです。

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.679日連続更新を達成しました。

 

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肉屋の仕事をしている肉屋

今日は「適サシ肉宣言」は唐突にポッと出たわけではない、という件です。

そもそも弊店が「肉屋の仕事をしている肉屋」だから、この宣言が言えたのだという点を知っていただけたら嬉しいです。

まず、そもそもの話しとして弊店は、

肉を仕入れておりません。

牛を仕入れています。

その時点で、牛さんは勿論生きてはいませんが、その子の誕生日と昇天日を知った上で仕入れています。卸屋さんから、精肉された状態の、「売れば良いだけ」「料理すれば良いだけ」の肉を仕入れておいでの、スーパーさんやレストランさんと弊店が決定的に違うのは、まずもって、ここです。その牛さん全体の良し・悪しを判断して仕入れているのが弊店です。

 

流れを正確に申しますれば、

まず食肉市場で「枝肉」の状態で競り落とします。「枝肉」というのは、牛から頭部や皮などを取り、タテに2分割した状態を言います。

この状態で、2~3週間安置し、熟成させます。すぐには「脱骨」しません。

ここは重要なポイントです。牛さんを、と殺してすぐ「脱骨」してはNGなのです。まだ落ち着いていない状態で無理やり「脱骨」しようとすると肉の組織が破壊されるので、大量のドリップ(血糊)が出てしまいますが、そのドリップこそが旨味なのです。無理やりはダメです。

安置させるのは、弊店と提携関係にある卸屋さんの倉庫です。「枝肉」の状態を、こちらへ報告してもらって、何日置くか、判断しています。そういうことが出来るのは、肉を仕入れているのではなく、牛を仕入れているからです。

さて、やがて時期が来たら、「枝肉」を「脱骨」しますが、その時点では熟成が進んでいます。肉の中の酵素の働きにより、肉のタンパク質が分解されていますから、作業の際に力をさほど込めなくても、肉が骨からスッと離れるのです。で、流れ出るドリップを最小限にすることが出来ます。

こうして「脱骨」が済みましたが、すぐには精肉しません。

ここでは「大分割」と申しまして、「肩」「ロース」「とっくり」といった具合に、大まかな状態に分けて、パックし、その状態で「ちんや」に搬入します。

「ちんや」は飲食店として、かなり大きい冷蔵庫を持っているのですが、それでも「枝肉」をたくさん吊るす場所はないので、「大分割」して搬入します。パックした後に、高温の湯に通して、表面の雑菌を殺します。

パックすると通期が悪くなってしまい、その分乾き方が遅れるのですが、いったん菌を殺す過程は、どうしても衛生上必要です。

だからこそ、最初に「枝肉」の状態で置いて、乾かすことが必要なのです。乾いた分だけ、旨味の濃度が濃くなりますからね、単純な話ですが。

結局「枝肉」の中の水分の15%程度は飛ばされますから、旨味は15%濃くなるのです。逆に申せば、脱骨後すぐパックした肉を食べた場合は、旨味が15%ほど薄く感じるはずです。

最近とある県庁さんから試食用の肉を送ってもらったことがありましたが、まさにこの点が残念でした。おそらく、と畜後すぐ脱骨・パックしたので、水分が飛ばず、水っぽい状態のままだったのです。その県は、エサに力を入れておいでとか聞きましたが、エサに気を遣うヒマがあるのなら、扱い方にも気を使って欲しいです。

ここで皆さんは疑問に思ったはずです。なるべく水分を飛ばしてから(=旨味を濃縮させてから)パックした方が美味しいのなら、なぜ全員がそうしないのだろう?

答えは、飛んで行った水も仕入れたものだったからです。飛んで行った水も銭だったと言っても良いです。

仕入れる時には、単価×重量=仕入れ金額となります。だから水も仕入れているのです。パックして水を閉じ込めないと損してしまいます。だから水を閉じ込めるんです。が、それでは旨味が足りないんですよね。

すぐにパックしないで下さい!と卸屋さんに弊店が言えるのは、牛一頭を丸ごと仕入れているからです。銭より味を重視しているからなのです。

さて、この状態で、最適の食べごろになるまで、またしばらく置きます。

で、時期が来たら、ついに精肉します。

このように、

どの牛を買うか

いつ脱骨するか

いつ精肉するか

という判断をする必要があるわけで、それが「肉屋の仕事」です。

肉屋さんは、「肉を切るのが上手い(だけの)人」ではないですよ。

「肉を切るだけ」は「作業」と言います。

「作業」と「仕事」は違うんですよね。

美味しくするのが「仕事」です。

分かるかなあ。

分っかんねえだろうなあ。

ここで「肉屋の仕事」として書いた内容は、主に熟成の件です。「肉屋の仕事をしている肉屋」とは「肉を醸す肉屋」とも言えます。

そして、さらに同じ心構えで脂のことを考えますと、「適サシ肉宣言」に成ります。「作業」だけでなく「仕事をしている肉屋」だから「適サシ肉宣言」が出来たんです。

肉を食べたお客様に美味しいと感じていただきたい、それも「多幸感」を感じる位美味しいと思っていただきたい、それが肉屋の仕事だ、という前提で脂のことを考えたら「適サシ肉宣言」が出てきたのです。その前提=顧客志向が大前提としてなければ、「適サシ肉宣言」はなかったと申し上げておきます。

分かるかなあ。

分っかんねえだろうなあ。

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.678日連続更新を達成しました。

 

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ご清聴ありがとうございました!

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

講演全文を、6/10から6/26までに分けてUPしましたので、ご覧いただければと思いますが、以下は受講生さんからの感想です。拙い話しをお褒めいただき、実に在り難いことでした。

 

(福島県の伝統産業の方)

本日は貴重なお話をいただき誠に有難うございました。本日のお話かなり心に残るものでした。私も震災に負けず、必ず生まれ変わり持続させようという想いが一層増しました。

今度、機会がございましたら、お店にお伺いさせていただければと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

 

(ベンチャー支援企業の方)

本日は、貴重なお時間いただき、大変面白くお話してくださってありがとうございます。日頃の向学心からくる博識と、お考えをストレートにお伝えくださるお人柄に、感銘を受けました。

2021年、どうなるのか、私も模索しておりますが、またお話できれば幸いです。浅草はよく行きますので、今度ぜひすき焼きも伺わせていただきます。

 

(埼玉県の農業関係の方)

本日は貴重な時間を割き、お話ありがとうございました。お客様の「おいしい」感覚に合わせた「適サシ肉宣言」や「思い出に残る店」を目指す姿勢など、派手に特別なことをするのではなく、ちょっとしたことのようで実は大変な、利他、後利の精神の徹底が、「ちんや」を形づくっていると感銘を受けました。浅草訪問の際には是非立ち寄らせていただきますので、そのときはご挨拶させてください。本日は有難う御座いました。今後とも宜しくお願い致します。

 

ご清聴ありがとうございました!

 

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.677日連続更新を達成しました。

 

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100年経営アカデミー⑰

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開してきましたが、本日が最終日です。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

さてさて、時間も押してきました。

日本は災害大国なのに老舗が多い、のではなく、災害大国だからこそ老舗が多いということは、今やパラドックスでもなんでもなく、納得的な話しとなりました。

『老舗企業の研究―100年企業に学ぶ伝統と革新』(横沢利昌・編著)の68ページには「ピンチの裏にチャンスあり」というように、ある面で危機はチャンスといえる。危機の「危」は脅威を意味するが、「機」は機会である。実際、創業以来の危機を転機として乗り切った老舗企業も数多く存在する。」と書いてありますが、同じことと思います。

そして災害の記憶は、この国に「木の発想」として継承されて来て、今後も継承続けるだろうと思います。が、では、さて、平時はどうなりましょうか。そこが今日の最後のポイントです。

災害と老舗の関係を考えてみた結果、リスクを経験しないことは、むしろリスクである、とすら思えます。オキシトシンの出てないの脳で社訓を読んでも、全然ピンときませんから、災害の時あれだけ結束した社内も緩み、近隣との関係も熱が冷めた感じになってしまていませんか。所謂「平時の人心の緩み」ですね。

景気良さげなムードは人心を緩ませます。

今日本はオリンピックを梃に、建設ブームとインバウンド・ラッシュを巻き起こし、景気を浮揚させようと必死です。超金融緩和で、金融面でもそれを支えてもいますが、大丈夫なんでしょうか。

経営者と銀行家がゆるゆるの投資計画に夢中になっていませんか。スキルが「いまいち」な労働者が、こんなオレでもどっかの会社で働けるだろうよと楽観していませんか。

実際、緩くて使命感の乏しい不動産投資計画が街を壊すことがあります。

花柳界を観て下さい。花柳界には総合的な日本文化が集積していますが、その文化に日本人が金を惜しむようになった結果、長期衰退の傾向にあります。そして、その料亭さんに今緩い投資ばなしが舞い込んで来ます。

そんな儲からない商売をなさっているより、広い土地をお持ちなんですから、いっそのこと廃業して、マンションを建てて不動産経営をなさいませんか?

マンションたった1棟を建てるために、芸事に励んできた芸者衆の出先が無くなるんですよ。結果、花柳界のド真ん中にマンションが立って、新住民は夜間の喧騒にクレームを入れてきます。何言ってんの?夜賑やかなのが花柳界でしょうが!!

街が壊れるというのは、こんな感じです。

後藤俊夫先生が嘆いておいでのように、企業を長生きさせることに意義はない、経済というのは新陳代謝を良くした方が良いんだと考える人がいます。新陳代謝した方が経済成長が高まると考える人たちですが、そういう輩がこういうことをするのです。

しかしですね。冷静に考えてみますと、景気が良い時だけ成立する仕事って、景気が良くなくなったら、成立しなくなりますよね。環境が良い時だけ成立する仕事って、環境が良くなくなったら、成立しなくなりますよね。

なのに日本人はムードに流されます。日本人の集団志向・絆の強さは、災害時には良い方向に作用しますが、同時に日本という国は、その集団志向による失敗をし易い国であって、平時や景気良さげなムードの時には特に気をつけないといけません。

逆に生き残った老舗はこれまで、そういう失敗から身を守って来ました。平時の老舗の姿勢の根本は懐疑主義あるいはバランス感覚であるべきだと私は考えています。

災害時に地震の揺れや津波は建物を破壊しますが、それは本当の資産ではありません。日本人が「木の発想」を持ち続け、本当の資産であるソフトウエアとお客様との関係を大切にし続ければ、老舗はこれからも残って行くと思います。

しかし、浮ついたムードは人の心を壊します。

地震は人の心を壊せません。津波も人の心を壊せません。火山も、台風も、戦争も人の心を壊せません。なのに、それらが壊せなかった人の心を、いっときの利益の為に失ったらかなり悲しいと私は今深く心配しています。

『長寿企業のリスクマネジメント』の166ページにあります通り、「倫理性はリーダーシップの最も重要な要素であり、組織の強さの源泉である」と私もまったくそう思うのですが、それが大丈夫?という感じになっているのが現在という時かと思います。

えー、時間となりました。本日の講演を終えるに当たり、この災い多く危険極まりない国土で、会社や店を永続させているこの国の、大勢の経営者達のために万歳を唱えたいと思います。

日本の老舗、万歳。

本日はご清聴ありがとうございました。

<これにて終わり。全部お読み下さった皆さん、誠に在り難うございました。>

追伸1

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今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

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旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

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100年経営アカデミー⑯

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

さて、次に老舗の社訓を考えてみます。老舗の社訓に書いてある利他主義あるいは後利主義の文言は、平時に読むとひどくマヌケに見えます。営利企業は利己主義の筈なのに、なんでまた建前を書いちゃってるんだろう・・・と思います。

しかし逆境と絆ホルモンの大量分泌を経験した店主が、その強烈な経験を書き残した文書だと思って読めば、すんなり読めます。

災害の時に自社をさて置いて利他的に行動し、自分の会社はもうダメでも仕方ない、と思ったのに、やがて近隣の皆さんに支えらえて復活を遂げた経営者は、絶対にその体験を書き遺したいと思うはずです。社訓とはそうした文書だと思って読まないとリアリテイーが今いち感じられません。

そして、そうした体験の無い人に社訓を分かってもらうのが難しい理由は、そこだと思います。利他的な社訓を社員さんに理解させるには、たぶん、毎日暗唱させるのも結構ですが、災害ボランティアに行かせるのが良いのです。平時に、経済学っぽいホモ・エコノミクスの頭で読んでも、全然心惹かれないが利他的な社訓だと思います。

今この話しは、いつの間にか完全に先生方に向けて話していますが、老舗研究の焦点は、利他主義だと私は思います。

利他主義の文言が経営理念や社訓に盛り込まれているか、いつ誰がどういう経緯で入れたのか、利他主義の精神が経営者の心に刻まれているか、が重要なことで他のことは、マーケテイングも組織設計も従属的なことだと思います。

私は、IQも学識も時間もないので出来ませんが、私が学者なら利他主義の件を、集中的に調べたいと思います。もちろん日本の石門心学、西洋のカルヴァン主義がバックボーンという具合に真面目に捉えるのが定説で結構とは思うのですが、たまには違う読み方をしてみてはいかが?と今日は申し上げてみました。

さてさて、時間も押してきました。日本は災害大国なのに老舗が多い、のではなく、災害大国だからこそ老舗が多いということは、今やパラドックスでもなんでもなく、納得的な話しとなりました。

『老舗企業の研究―100年企業に学ぶ伝統と革新』(横沢利昌・編著)の68ページには「ピンチの裏にチャンスあり」というように、ある面で危機はチャンスといえる。危機の「危」は脅威を意味するが、「機」は機会である。実際、創業以来の危機を転機として乗り切った老舗企業も数多く存在する。」と書いてありますが、同じことと思います。

そして災害の記憶は、この国に「木の発想」として継承されて来て、今後も継承続けるだろうと思います。が、では、さて、平時はどうなりましょうか。そこが今日の最後のポイントです。

災害と老舗の関係を考えてみた結果、リスクを経験しないことは・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

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旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

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浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

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100年経営アカデミー⑮

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

 

100年経営論」「老舗論」を論ずるには、どうしても逆境を経験した時の、経営者の心を論ぜざるを得ない(つまり人間論=脳科学にまで行ってしまう)と私は思うのです。

例えば、震災、戦災のように人間が非常に悪い環境に直面した時に、利己的な行動をせず、逆に普段はしないような、とても善良な行動をする人います。

この傾向を指す学術用語はないそうですが、脳科学の知見では、大きな災害が起きた時など、危機が迫ったとき、脳で造られ、分泌されるホルモンの1種「オキシトシン」の感受性がどうやら変わると言われています。これは「絆ホルモン」とでもいうべきものです。関係性が濃くない他人をも深く信用するからです。

その「絆ホルモン」が人に利他的な行動をとらせて、個人が生き延びることより、集団が生き延びようとすることを優先させようとします。東北の地震の時、自分の会社が津波にやられたのに、高台の倉庫に残っていた備蓄を被災者に提供した社長さんがいました。誰それ、ということではなく、多くの方がそうしました。備蓄が残ったことを隠して、自分だけ生き残れば良いのに、そうはなさいませんでした。

脳が、共同体全体に奉仕せよと命じたからです。そして、共同体はその会社を忘れませんでした。会社と市民の絆は津波を経験して深まったのです。逆に、自分だけが生きようとした人はバッシングを受けました。バッシングもまた脳の命令だからです。

こうして組織が良く行きのびるのは、日本が災害大国だからなのです。それで日本に老舗が多い、というのが、私が今日ご提示する仮説です。

実はこれは、ごく最近私が、脳科学者で人気コメンテイターの中野信子先生とやりとりする中で盛り上がって来たネタなので、先生から「断定的な言い方はダメですよ」と釘をさされてはいるんですが、脳科学的に大間違いな話しではないと講演で言ってOKですよ!と言っていただております。

私自身の経験に照らしてもこの筋は納得的です。

2001年のBSE問題で売上が半分に成った時、まずストレスで金玉、いや精巣が縮みました=リアルに臓器の機能に影響が出ましたね。次に助けてくれる方や優しくしてくれる方に無常の愛を感じて、なんとかしてこの人達のお役にたちたいと思いました。本来自分の会社を守ることが優先の筈ですが、そんなことは後回しにしてもOKだと思いました。

これが私の利他主義の原点ですが、今思えば、ストレスに対抗しようとして、脳が絆ホルモンを出したからかな・・・と思えます。

ここでオキシトシンについて、もう少し説明しますと、このホルモンは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれ、ストレスを緩和し幸せな気分をもたらします。人に人を信用させるホルモンでもありまして、その効果のスゴさは実験でも確かめられています。

オキシトシンをヒトに投与する実験が行われたことがあるそうですが、鼻から吸引させますと、金銭取引において相手への信頼感が増すことが判明したそうです。相手が詐欺師で、その取引で損害を蒙ってもオキシトシンが再投与されると、なんと再び詐欺師を信頼し、不利な取引契約を締結してしまうのだそうです。「盲目的に信頼した」とも言えるレベルで、実に恐ろしいですが、実験で確かめられています。

また、このホルモンは、愛撫や抱擁などの皮膚接触による刺激によっても放出されるため、「抱擁ホルモン」と呼ばれることがあります。性行為では大幅に分泌が増加されオーガズムの瞬間には男女ともに分泌されます。

平たく申しますと、これは逝く時のホルモンです、はい。つまりですね、自分の会社が津波で被災しているのに、備蓄を被災者に放出した社長の脳の中は、逝ってしまってるんです。SEXしてないのに、です。じゃなければ、虎の子の備蓄を放出なんてしません。

それが脳にとっては気持ち良いんですし、このホルモンが出ないと人はストレスに負けてしまうのです。私も、BSEの時に「このままで推移した場合ウチはいつ頃行き詰るのか」という計算をしましたが、そんな計算からは出来れば逃れたいですね。そして、逃れさせてくれるのが、この絆ホルモンだったろうと思います。

とにかく、状況が津波でも戦争でもBSEでも経済合理的に対処していない、というところがポイントでして、それは社会科学的には説明しがたい現象ではないかと私は考えています。

さて、次に老舗の社訓を考えてみます。老舗の社訓に書いてある利他主義あるいは後利主義(ベンサムの功利主義じゃなくて後の利益の後利)の文言は、平時に読むと・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

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追伸2

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浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

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2016年2月25日発売

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100年経営アカデミー⑭

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

このようにして、この本の皆さんは、元の位置に留まり続けました。

皆さんがそういう人生を選んだ理由は、やはり戦争という危機の記憶だと私は思います。人間の、へなちょこな合理性など吹っ飛ばしてしまう経験を経て、皆さんは自分の人生の目的として儲け以外のもの・非経済的なものを考えるようになったのだろうと私は想像しています。

以上浅草の話しをさせていただきましたが、さて、ここから今日の話しは、いささか踏み込んだ話しになります。

老舗の話し、特に老舗が危機を突破してきた話しに、これから脳科学を採り入れて論じようと思います。

実は、私としては、この発想で長年の疑問が氷解した感があり、実は内心自慢たらたらです(笑い)

さてその「疑問」とは勿論、なぜ災害の多い日本に老舗が多いのか、

なぜ老舗の社訓にはたいてい利他の精神が掲げられているのか、という件でして、私はずっと気になっていました。皆さんもそうだろうと思います。

そして、その疑問が、初めて脳内ホルモンであるオキシトシン(所謂「絆ホルモン」)で納得的に説明できるかもしれないのです。

後藤先生の事例集を眺めてみますると、100年経営を実現出来ている会社の中には、大災害で被災して、前より良い会社に成ったところがたくさんあります。所謂「ピンチをチャンスにした会社」です。

昭和の戦争で大空襲を経験した浅草の店も勿論そうです。だから「100年経営論」「老舗論」を論ずるには、どうしても逆境を経験した時の、経営者の心を論ぜざるを得ない(つまり人間論=脳科学にまで行ってしまう)と私は思うのです。

例えば、震災、戦災のように人間が非常に悪い環境に直面した時に、利己的な行動をせず、逆に普段はしないような、とても善良な行動をする人います。この傾向を指す学術用語はないそうですが、脳科学の知見では、大きな災害が起きた時など、危機が迫ったとき・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.673日連続更新を達成しました。

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100年経営アカデミー⑬

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

この「木の発想」は、勿論浅草独自のものでも江戸独自のものでもなく、日本全体にありますね。なにしろ、この国は伊勢神宮を二十年に一度建て替える国です。

京都だって、昭和の戦争では焼けていないものの、幕末の戦いや応仁の乱では焼けていて、平安時代の建物は残っていません。しかし平安時代のイメージの街です。そういう国にこの発想はしっかりと根づき、それを基盤に日本の老舗は存続してきたのだろうと思われます。

戦争以前から地震・津波・噴火・台風と何でもござれの災害大国である日本が同時に世界一の老舗大国でもあるというパラドクスがハッキリと存在していて、本当に考えさせられます。そして浅草はその中でも典型的な例・典型的な土地柄だと言ったら良いのかもしれません。

ソフトウエア優先の発想=木の発想が元々ある所へ、関東大震災と昭和の戦争を経験し、特に街の中心である浅草寺と神輿が焼ける体験をしたことが、浅草を浅草たらしめたと私は考えています。

その後も和装業界、花柳界といった個別の業界でも浮き沈みがありました。神輿の業界のように高度成長した後に、祭りが省みられなくなって危機がやって来た業界もありましたし、どじょう屋さんは、1960年代からどじょう資源の枯渇に悩まされました。

ここで、どじょう屋さんのついて考えてみますと、そもそも商いというものは、原材料が豊富に獲れるから、という所からスタートする場合があります。かつてどじょうは日本中の田んぼにたくさん棲んでいましたので、どじょう料理屋さんは、気軽に安く栄養を摂るための便利な店=ファーストフード感覚の店でした。

代々の中で一番ご苦労なさったという先代の渡辺繁三さんはご著書の中で自分が店を継いだ頃の客層について「気が荒くって、職人肌のお客が多かったように思います。」と書いています。戦前は朝7時から営業していて「朝は天秤かついだ人、薬売り、金魚売り、苗売り、それと近在の農家が市場に荷を運んだ帰りに寄って下さる・・・」という感じです。

しかし1960年代から農薬の影響で仕入れ難の時代になりました。どじょうが田んぼにいなくなったのです。結局、幾多の困難を乗り越えて、どじょうをわざわざ養殖し、お店もわざわざ文化体験として行くような店に仕立て直さねばなりませんでした。

今では「駒形どぜう」さんと言えば「江戸文化を食べる店」です。また当代の渡辺孝之さんと言えば江戸文化の伝道師です。「江戸文化道場」の継続的な開催が評価されて、2001年には「企業メセナアワード地域文化賞」を受賞されています。

もし1960年代にどじょうを諦めていたら、こうは成らなかったと思います。

このように簡素な物を文化にまで仕立て上げて、しかし過度に高級にはしない、それも「お客さまを巻き込んで面白可笑しく」という所に、私は浅草っ子の真骨頂を見る思いがします。

「駒形」さんのキャッチコピーの「お値打ち」とは、単に料理と価格の間の「コスパ」のことを言っているのではなく、江戸文化を満喫できるという価値をも含めた「値」だと考えないといけません。そういう感覚を持てる店を創り上げる為に渡辺さんが積み上げてきた努力の量は、本にあります通り、圧倒的と言う他ないものです。

「駒形」さんが企業メセナアワードが獲った時、同時に「メセナ大賞」を獲った会社の資本金は584億円強でした。対するに㈱駒形どぜうさんは 2.000万円。そう、文化を創り成すのに資本は2.000万円で充分なのです。この両社が今でも並んで掲載されていることが私は痛快でなりません。

このようにして、この本の皆さんは・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.672日連続更新を達成しました。

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100年経営アカデミー⑫

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

このように伝統と申しますものは、ずっと連続して継承されるものではなく、時には失われて、しかし再建されて続いているものなのだというところが、浅草の話しのポイントです。

それが浅草の場合戦争であり、そのわずか二十二年前に起きた関東大震災でした。二十世紀の前半のごく短期間に焼け野原を二度体験したのが浅草なんです。

その状態から伝統を再建するという過酷な作業を経験する中で現代浅草が形成されたことは間違いなく、本を読んでいただけば、お分かりいただけると思うのですが、その記憶は今でもこの街の人々の間に保存されています。

戦争で浅草寺と神輿が焼けてしまったことは、やはり現代浅草に大きな大きな影響を与えていると思います。街の中心・心の拠り所が失われたことの喪失感は勿論大きく、しかし観音様ご本尊だけはなんとか焼失を免れたので、再度観音様を中心にお寺を再建することが出来ました。

信仰があればお寺が再建できたわけですが、商店も同じことです。

店舗は焼けてしまいましたが、人が逃げのびて、その人が信用や技術つまりソフトウエアを持っていれば商いは再建できたのです。心の拠り所が徹底的に破壊され、自分の店も跡形もなくなった時に、浅草の店主達は諦めませんでした。いや、再建をやり遂げねば悔しくて仕方がないというのが当時の浅草でした。

建物がなくなっても、自分達には腕がある、お客様もいる。きっと人の力で伝統を復活させてみせる。そうかたく心に誓ったのだと思います。

店にとっての本当の資産は土地でも建物ではない。本当の資産は目に見えないもので、財務諸表に載っていない~そう言われたりします。それと根本的には同じ内容なのですが、浅草の場合はその感覚がずっと深刻でした。

「おでん」の舩大工さんのお父様が言った「牛のよだれ」の決意が、その典型だと思います。本当の資産は腕とお客様だ~そう信じなければ立つ瀬がない。そんな状況を皆が通りぬけて来た、その経験が現代浅草の原点だということを、この対談で私は痛切に再認識したのでした。

本当の資産はソフトウエアだという発想は、「木の発想」と言い換えることが出来るかもしれません。リアルな資産はどれだけ堅牢に建てても燃えてしまうことがある、だからそういう場合に常日頃から備えておかねばならない、という発想です。

今回「駒形どぜう」さんと「宮本夘之助商店さん」で、戦争中木材を別の場所に用意して戦災に備えていた、という話を聞きました。敗戦を予測して準備していたのです。負けるだろうと公言すれば即逮捕ですが、密かに用意しておいででした。

これは喧嘩と並んで火事が「華」だった江戸の発想・江戸の知恵ですね。江戸時代の江戸の人口は世界一で、人がやたらと密集して、木の家に住んでいたので、こういう知恵が発達したのだと思いますが、それが昭和の戦争でも活きたというのは、ちょっとビックリでした。

そう言えば、「ちんや」の前の雷門通りが広いのは、元々「火よけ地」だったからです。火事の延焼を防ぐために道路を広くしたもので、以前は「浅草広小路」と言っていました。「木の発想」を忘れないために、「広小路」という名前も忘れたくないものだと思っています。

この「木の発想」は、勿論浅草独自のものでも江戸独自のものでもなく、日本全体にありますね。なにしろ・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.671日連続更新を達成しました。

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