100年経営アカデミー⑫
100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、
「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。
「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。
6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。
<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>
このように伝統と申しますものは、ずっと連続して継承されるものではなく、時には失われて、しかし再建されて続いているものなのだというところが、浅草の話しのポイントです。
それが浅草の場合戦争であり、そのわずか二十二年前に起きた関東大震災でした。二十世紀の前半のごく短期間に焼け野原を二度体験したのが浅草なんです。
その状態から伝統を再建するという過酷な作業を経験する中で現代浅草が形成されたことは間違いなく、本を読んでいただけば、お分かりいただけると思うのですが、その記憶は今でもこの街の人々の間に保存されています。
戦争で浅草寺と神輿が焼けてしまったことは、やはり現代浅草に大きな大きな影響を与えていると思います。街の中心・心の拠り所が失われたことの喪失感は勿論大きく、しかし観音様ご本尊だけはなんとか焼失を免れたので、再度観音様を中心にお寺を再建することが出来ました。
信仰があればお寺が再建できたわけですが、商店も同じことです。
店舗は焼けてしまいましたが、人が逃げのびて、その人が信用や技術つまりソフトウエアを持っていれば商いは再建できたのです。心の拠り所が徹底的に破壊され、自分の店も跡形もなくなった時に、浅草の店主達は諦めませんでした。いや、再建をやり遂げねば悔しくて仕方がないというのが当時の浅草でした。
建物がなくなっても、自分達には腕がある、お客様もいる。きっと人の力で伝統を復活させてみせる。そうかたく心に誓ったのだと思います。
店にとっての本当の資産は土地でも建物ではない。本当の資産は目に見えないもので、財務諸表に載っていない~そう言われたりします。それと根本的には同じ内容なのですが、浅草の場合はその感覚がずっと深刻でした。
「おでん」の舩大工さんのお父様が言った「牛のよだれ」の決意が、その典型だと思います。本当の資産は腕とお客様だ~そう信じなければ立つ瀬がない。そんな状況を皆が通りぬけて来た、その経験が現代浅草の原点だということを、この対談で私は痛切に再認識したのでした。
本当の資産はソフトウエアだという発想は、「木の発想」と言い換えることが出来るかもしれません。リアルな資産はどれだけ堅牢に建てても燃えてしまうことがある、だからそういう場合に常日頃から備えておかねばならない、という発想です。
今回「駒形どぜう」さんと「宮本夘之助商店さん」で、戦争中木材を別の場所に用意して戦災に備えていた、という話を聞きました。敗戦を予測して準備していたのです。負けるだろうと公言すれば即逮捕ですが、密かに用意しておいででした。
これは喧嘩と並んで火事が「華」だった江戸の発想・江戸の知恵ですね。江戸時代の江戸の人口は世界一で、人がやたらと密集して、木の家に住んでいたので、こういう知恵が発達したのだと思いますが、それが昭和の戦争でも活きたというのは、ちょっとビックリでした。
そう言えば、「ちんや」の前の雷門通りが広いのは、元々「火よけ地」だったからです。火事の延焼を防ぐために道路を広くしたもので、以前は「浅草広小路」と言っていました。「木の発想」を忘れないために、「広小路」という名前も忘れたくないものだと思っています。
この「木の発想」は、勿論浅草独自のものでも江戸独自のものでもなく、日本全体にありますね。なにしろ・・・
<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>
追伸1
6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。
今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、
「世界が恋するWASHOKU」。
旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。
追伸2
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.671日連続更新を達成しました。
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