100年経営アカデミー⑰

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開してきましたが、本日が最終日です。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

さてさて、時間も押してきました。

日本は災害大国なのに老舗が多い、のではなく、災害大国だからこそ老舗が多いということは、今やパラドックスでもなんでもなく、納得的な話しとなりました。

『老舗企業の研究―100年企業に学ぶ伝統と革新』(横沢利昌・編著)の68ページには「ピンチの裏にチャンスあり」というように、ある面で危機はチャンスといえる。危機の「危」は脅威を意味するが、「機」は機会である。実際、創業以来の危機を転機として乗り切った老舗企業も数多く存在する。」と書いてありますが、同じことと思います。

そして災害の記憶は、この国に「木の発想」として継承されて来て、今後も継承続けるだろうと思います。が、では、さて、平時はどうなりましょうか。そこが今日の最後のポイントです。

災害と老舗の関係を考えてみた結果、リスクを経験しないことは、むしろリスクである、とすら思えます。オキシトシンの出てないの脳で社訓を読んでも、全然ピンときませんから、災害の時あれだけ結束した社内も緩み、近隣との関係も熱が冷めた感じになってしまていませんか。所謂「平時の人心の緩み」ですね。

景気良さげなムードは人心を緩ませます。

今日本はオリンピックを梃に、建設ブームとインバウンド・ラッシュを巻き起こし、景気を浮揚させようと必死です。超金融緩和で、金融面でもそれを支えてもいますが、大丈夫なんでしょうか。

経営者と銀行家がゆるゆるの投資計画に夢中になっていませんか。スキルが「いまいち」な労働者が、こんなオレでもどっかの会社で働けるだろうよと楽観していませんか。

実際、緩くて使命感の乏しい不動産投資計画が街を壊すことがあります。

花柳界を観て下さい。花柳界には総合的な日本文化が集積していますが、その文化に日本人が金を惜しむようになった結果、長期衰退の傾向にあります。そして、その料亭さんに今緩い投資ばなしが舞い込んで来ます。

そんな儲からない商売をなさっているより、広い土地をお持ちなんですから、いっそのこと廃業して、マンションを建てて不動産経営をなさいませんか?

マンションたった1棟を建てるために、芸事に励んできた芸者衆の出先が無くなるんですよ。結果、花柳界のド真ん中にマンションが立って、新住民は夜間の喧騒にクレームを入れてきます。何言ってんの?夜賑やかなのが花柳界でしょうが!!

街が壊れるというのは、こんな感じです。

後藤俊夫先生が嘆いておいでのように、企業を長生きさせることに意義はない、経済というのは新陳代謝を良くした方が良いんだと考える人がいます。新陳代謝した方が経済成長が高まると考える人たちですが、そういう輩がこういうことをするのです。

しかしですね。冷静に考えてみますと、景気が良い時だけ成立する仕事って、景気が良くなくなったら、成立しなくなりますよね。環境が良い時だけ成立する仕事って、環境が良くなくなったら、成立しなくなりますよね。

なのに日本人はムードに流されます。日本人の集団志向・絆の強さは、災害時には良い方向に作用しますが、同時に日本という国は、その集団志向による失敗をし易い国であって、平時や景気良さげなムードの時には特に気をつけないといけません。

逆に生き残った老舗はこれまで、そういう失敗から身を守って来ました。平時の老舗の姿勢の根本は懐疑主義あるいはバランス感覚であるべきだと私は考えています。

災害時に地震の揺れや津波は建物を破壊しますが、それは本当の資産ではありません。日本人が「木の発想」を持ち続け、本当の資産であるソフトウエアとお客様との関係を大切にし続ければ、老舗はこれからも残って行くと思います。

しかし、浮ついたムードは人の心を壊します。

地震は人の心を壊せません。津波も人の心を壊せません。火山も、台風も、戦争も人の心を壊せません。なのに、それらが壊せなかった人の心を、いっときの利益の為に失ったらかなり悲しいと私は今深く心配しています。

『長寿企業のリスクマネジメント』の166ページにあります通り、「倫理性はリーダーシップの最も重要な要素であり、組織の強さの源泉である」と私もまったくそう思うのですが、それが大丈夫?という感じになっているのが現在という時かと思います。

えー、時間となりました。本日の講演を終えるに当たり、この災い多く危険極まりない国土で、会社や店を永続させているこの国の、大勢の経営者達のために万歳を唱えたいと思います。

日本の老舗、万歳。

本日はご清聴ありがとうございました。

<これにて終わり。全部お読み下さった皆さん、誠に在り難うございました。>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.676日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
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