100年経営アカデミー⑧
100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、
「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。
「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。
6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。
<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>
この時に「ブランド化=サシを入れること」と考えるのは単純過ぎやしないか?ひたすらサシが多い肉は本当にお客様に喜んでいただけるのか?脂肪の質も考慮しないといけないのではないか?といった問題提起が行われていれば、今日のような事態に至らずに済んだと思うのですが、なぜだか、問題提起は行われませんでした。業界に重くのし掛かった危機感が異論を封じ込めたのかもしれません。
同じ頃DNA鑑定やビタミンコントロールの技術が登場したことで、サシは行き過ぎてしまいました。やがて、お客様から嫌われる水準にまで過剰なサシが肉に入るようになったのです。
この残念なブランド化あるいは、残念なマーケテイングは「失敗学」の研究対象に成るのでは?そう私は考えています。
そもそもですが、ブランドの基礎はお客様への「お約束」であり、その裏返しとしての、お客様からの信用・信頼である筈です。で、私が今年の1月15日に宣言したのは「適サシ肉だけを売ります」「過剰なサシを売りません」という「適サシ肉宣言」だったのですが、これは「お約束」であって、それを私は「ちんや」というブランドの基盤にしたいと願っています。
しかし、××牛の産地の人達や県庁の人達は違いました。消費者向けには、青い空や生産者の純朴な笑顔を使ったCMを打っておいて、実際には脂の多い肉を売り込もうとしていました。あるいはロゴを創ったり・ゆるキャラを創ったりして、実際には脂の多い肉を売り込もうとしていました。
そのブランド化に無理はなかったのでしょうか?そのマーケテイングに無理はなかったのでしょうか?
私は、かなりの無理筋だったと思います。その無理筋の作戦を、こんなにも長期間、皆がなぜ平押しに押し続けてしまったのか?「失敗学」の教材として良いのではないでしょうか?
思えばですね、話しが膨らむのが私の悪い癖ですが、昭和の戦争がなぜ起きたかを考えますると、関東大震災に辿り着きます。サシの過剰化の「そもそも」も辿っていけば、この17年間に業界が被ったダメージに行き着きます。
昭和の戦争を、サシの過剰化を、なぜ誰も止められなかったのか、面白い研究テーマだと思いますし、また、皆さんが自分のお店のブランドを育てて行く時には、決して、絶対にマネてはならない事例だと思います。
話しを戻しますが、こうして、この17年で「霜降り」はネガテイブ・イメージの言葉に成っていきました。一番高いメニューが売れないのではビジネスとして本当に困ります。事此処に至って、「霜降り」という言葉を廃止するしかない、私はそう思い至ったのでした。
それが「適サシ肉宣言」です。
「適サシ肉」とは言うまでもなく、適度な霜降肉のことで、サシの入り方が過剰でないことを意味する、私の造語で、ただ今商標出願中です。
具体的には脂肪の量が4等級である牛を使います。高級肉の代名詞だったA5等級は今は使っておりません。4等級は、それなりにサシが入っている肉ですが、「霜降り」という言葉にはネガテイブ・イメージがこびりついてしまったので、この際思い切って、使わないことにしました。
「霜降り」というビッグワードを廃止するのですから、これはかなりのリスクでした。
「霜降り」という言葉を廃止するしかない、と心に決めたものの、いつやるのか?失敗したら、どうなってしまうのか?そう簡単に決断できる筈もありません。数年悩み、いたずらに日が過ぎて行きましたが、今年のはじめに敢行しました。
反響は・・・
<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>
追伸1
6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。
今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、
「世界が恋するWASHOKU」。
旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。
追伸2
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.667日連続更新を達成しました。