100年経営アカデミー⑮

100年経営研究機構さん、ハリウッド大学院大学さんが主催する、

「100年経営アカデミー」で、ゲスト講師として講演をさせていただきました。

「100年経営アカデミー」は“100年経営を科学する”をテーマに、長寿企業から長く続く経営の秘訣を体系的に学び、経営の中で実践していくことを目的とした、日本で初の講座です。

6/11から講演全文を公開しています。長いので16回に分けて少しずつUPしております。

<「100年経営アカデミー」住吉史彦講演(2017.6.10)>

 

100年経営論」「老舗論」を論ずるには、どうしても逆境を経験した時の、経営者の心を論ぜざるを得ない(つまり人間論=脳科学にまで行ってしまう)と私は思うのです。

例えば、震災、戦災のように人間が非常に悪い環境に直面した時に、利己的な行動をせず、逆に普段はしないような、とても善良な行動をする人います。

この傾向を指す学術用語はないそうですが、脳科学の知見では、大きな災害が起きた時など、危機が迫ったとき、脳で造られ、分泌されるホルモンの1種「オキシトシン」の感受性がどうやら変わると言われています。これは「絆ホルモン」とでもいうべきものです。関係性が濃くない他人をも深く信用するからです。

その「絆ホルモン」が人に利他的な行動をとらせて、個人が生き延びることより、集団が生き延びようとすることを優先させようとします。東北の地震の時、自分の会社が津波にやられたのに、高台の倉庫に残っていた備蓄を被災者に提供した社長さんがいました。誰それ、ということではなく、多くの方がそうしました。備蓄が残ったことを隠して、自分だけ生き残れば良いのに、そうはなさいませんでした。

脳が、共同体全体に奉仕せよと命じたからです。そして、共同体はその会社を忘れませんでした。会社と市民の絆は津波を経験して深まったのです。逆に、自分だけが生きようとした人はバッシングを受けました。バッシングもまた脳の命令だからです。

こうして組織が良く行きのびるのは、日本が災害大国だからなのです。それで日本に老舗が多い、というのが、私が今日ご提示する仮説です。

実はこれは、ごく最近私が、脳科学者で人気コメンテイターの中野信子先生とやりとりする中で盛り上がって来たネタなので、先生から「断定的な言い方はダメですよ」と釘をさされてはいるんですが、脳科学的に大間違いな話しではないと講演で言ってOKですよ!と言っていただております。

私自身の経験に照らしてもこの筋は納得的です。

2001年のBSE問題で売上が半分に成った時、まずストレスで金玉、いや精巣が縮みました=リアルに臓器の機能に影響が出ましたね。次に助けてくれる方や優しくしてくれる方に無常の愛を感じて、なんとかしてこの人達のお役にたちたいと思いました。本来自分の会社を守ることが優先の筈ですが、そんなことは後回しにしてもOKだと思いました。

これが私の利他主義の原点ですが、今思えば、ストレスに対抗しようとして、脳が絆ホルモンを出したからかな・・・と思えます。

ここでオキシトシンについて、もう少し説明しますと、このホルモンは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれ、ストレスを緩和し幸せな気分をもたらします。人に人を信用させるホルモンでもありまして、その効果のスゴさは実験でも確かめられています。

オキシトシンをヒトに投与する実験が行われたことがあるそうですが、鼻から吸引させますと、金銭取引において相手への信頼感が増すことが判明したそうです。相手が詐欺師で、その取引で損害を蒙ってもオキシトシンが再投与されると、なんと再び詐欺師を信頼し、不利な取引契約を締結してしまうのだそうです。「盲目的に信頼した」とも言えるレベルで、実に恐ろしいですが、実験で確かめられています。

また、このホルモンは、愛撫や抱擁などの皮膚接触による刺激によっても放出されるため、「抱擁ホルモン」と呼ばれることがあります。性行為では大幅に分泌が増加されオーガズムの瞬間には男女ともに分泌されます。

平たく申しますと、これは逝く時のホルモンです、はい。つまりですね、自分の会社が津波で被災しているのに、備蓄を被災者に放出した社長の脳の中は、逝ってしまってるんです。SEXしてないのに、です。じゃなければ、虎の子の備蓄を放出なんてしません。

それが脳にとっては気持ち良いんですし、このホルモンが出ないと人はストレスに負けてしまうのです。私も、BSEの時に「このままで推移した場合ウチはいつ頃行き詰るのか」という計算をしましたが、そんな計算からは出来れば逃れたいですね。そして、逃れさせてくれるのが、この絆ホルモンだったろうと思います。

とにかく、状況が津波でも戦争でもBSEでも経済合理的に対処していない、というところがポイントでして、それは社会科学的には説明しがたい現象ではないかと私は考えています。

さて、次に老舗の社訓を考えてみます。老舗の社訓に書いてある利他主義あるいは後利主義(ベンサムの功利主義じゃなくて後の利益の後利)の文言は、平時に読むと・・・

<今日の分は終わり。続きは明日の弊ブログにて>

追伸1

6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。

今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、

「世界が恋するWASHOKU」。

旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。

 

追伸2

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.674日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
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