持続可能な観光経済
観光名所を創るって、そんなに簡単ではないですよ。
「世界文化遺産」への登録が確実となった富岡製糸場に観光客が殺到しているそうですが、「文化遺産」がイキナリ名所に成ってしまって大丈夫なのか、私は心配ですね。
報道によりますと、観光客は「普通に歩いてるつもりでも、車をよけなくちゃいけないから、ちょっと危ないなと思いますよね」
また駐車場は午前10時には満車になるところが見られるとかで、観光バスの運転手は
「昔ながらの道に入ってくると。道路自体は狭い。駐車場をきちっと整備してくれれば」と話しているそうな。
で、富岡市役所は早速対策に乗り出す方針だとか。
観光客が増えれば、市が豊かになるから、対策費用や施設の維持費用も出せるようになる、と市や関係者は期待しているだろうと思いますが、そんなに簡単ではないですよ。
上手く行っていない例として「日本のマチュピチュ」「天空の城」こと竹田城があります。観光客がちっとも金を使ってくれず、城を荒らすばっかりだからです。
竹田城は非常に不便な場所だから、商店街が創りにくく、観光客が金を使うところがないのです。市内には団体客が泊まれる旅館もほとんど無いのだとか。
客は観光バスでやって来て、城を見たらチョッキいや直帰してしまうようです。
富岡がそうならないことを願います。
観光客が確実に金を使い、その金が施設維持へ廻る仕組みを構築すべきです。それが上手く出来ないのなら、むしろ観光客なんて、受け入れないことです。
浅草寺だって元々は観光名所ではなく、信仰の対象でした。
しかし結局は観光名所と成りました。そして観光客に確実に金を使わせています。
寺は周辺の、かつて塔頭(たっちゅう)が在った土地を民間の商人に貸し付けて、土地代を徴収していて、その経済が寺の文化財の維持費に充当されています。
おお、そうか、商店街を創れば良いのか、ですって?!
甘いですな、富岡の皆さん。
立派に商店街が出来ても、売られている商品のセンスが悪く、売られている料理がマズければ×ですよ。
観光客とは、そんなに甘いものではなく、タダで観られる所には喜んでいきますが、有料の所やマズい所には入りません。金を使わずに地元民に迷惑だけかけて帰って行く人が多数なのです。
そういう迷惑をいかにミニマムにして、逆に金を使わせるかこそ、最大の課題です。今時はそれを「持続可能な観光経済の構築」と言うそうです。
浅草にだって、ただゴミだけが多く残され、観光客が買うのはコンビニ弁当ばかり、という催事があります。その催事については「持続可能な観光経済」が構築できていないのです。
これから苦労しますよ、富岡の皆さん。
追伸
ムック本『江戸っ子に学ぶ! 浅草本』に載せていただきました。ありがとうございます。
「枻(えい)出版社」刊行、エイムック2855。
<内容>浅草寺を中心に発展してきた“浅草”は、江戸の文化と今が混在する街で、歴史とグルメと情緒を肌で感じる場所がそこかしこにあります。100年、200年と続く老舗のうなぎ、どぜう、そば、天ぷら、すき焼など和のお店をはじめ、絶妙の味を伝える洋食屋さんや女性にとって嬉しい甘味処など目白押しです。いっぽう、かっぱ橋周辺に足を伸ばせば、木札や手ぬぐい、櫛といった職人の技が織りなす伝統の工芸品に出会うことができます。そこで本書は、浅草をまるごと楽しむために「食・技・遊・祭」の4つを徹底的に紹介しました。また巻頭では、浅草在住のたいとう観光大使をつとめる、なぎら健壱さんといとうせいこうさんに登場をいただき、浅草の魅力を語っていただきました。
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毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。