5代目と3代目
河路和香先生の長篇時代小説『どぜう屋助七』は、「駒形どぜう」さんの4代目を主人公にした小説です。文芸雑誌「Jノベル」に連載されてきて、9月号で無事最終回を迎えました。
この小説には、狆を売っていた頃の私の祖先・住吉やすも登場するのですが、やすはあくまで脇筋なので、いつかお話しするとしまして、今日は最終回の、4代目が亡くなる前後の、本筋の部分を読んで気づいたことをお話ししたいと思います。
さて、料理屋の店主としては破天荒な生涯を送った4代目が39歳の若さで亡くなったのは明治4年、明治維新の直後のことでした。
この時点で、「駒形どぜう」さんには、ご隠居すなわち3代目と、修行を終えて戻って来たばかりの若旦那すなわち新5代目がいました。
若旦那はまだ若くて父から充分な事業継承を受けておらず、しかし新時代の新しい発想だけは吸収しています。その5代目と3代目の対話の部分が、事業継承の物語として、興味深く読める部分です。
5代目は、4代目の四十九日を終えると店をぬけることが多くなり、いったい何をしているか、と申しますと、
不動産経営や、米の相場。
当然、その様子を見た3代目が苦情を言いますが5代目は独自の理論で反論します。曰く、
「金儲けは別のところでやって、(どぜう屋は)一種の道楽で、損をしてもいいように、安い値段で続けたい、っていうことなんだよ」
「だからどぜう汁も鍋も値上げはしない。世の中のために、安くてうまい店を続けたいんだ。だから、それを別のところでがっちり手堅く稼ぐんだ」
これには、真面目は3代目は「そんな・・・」と絶句してしまいます。
さらに5代目は、購入した農地で農業を始めてしまいます。「川上との統合」ですね。
材料は出入りの業者から買うもの、と考えている3代目から見たら、おそるべき発想です。
ダメ押しで「おじいさん、もう昔とは時代が違うよ」
「どぜう屋は一種の道楽」というのは、現当主6代目が言っておいでのことに近いですが、こんな昔から言っていたんですね。
もっとも6代目は不動産とか相場ではなく、外食産業を展開することで、利益を出しておられるようです。
さてさて、この5代目と3代目の対話、どちらにも理がありますが、皆さんはどう読まれましたでしょうか。
追伸①
単行本『東京百年老舗』に載せていただきました。
21人のフォトグラファーたちが、歴史と伝統を現在に伝える「老舗」の魅力を余すことなく写しだした写真集です。
時代が変わっても、変わることのない老舗の魅力が、ここにあります。
くわしくはこちら↓です。
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は361人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.298日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。