断腸亭日乗の中の、すき焼き

 月刊「百味」9月号が届きました。

 今月号には「かぶちゃん」こと鏑木武弥さんと、私の対談記事が載っているので、そこを先に読んでしまいましたが、やはり「百味」に連載されている、向笠千恵子先生の「続すきやきものがたり」も必読です。

 読みますと、終戦前日の昭和20年8月14日、文豪・永井荷風と谷崎潤一郎が一緒にすき焼きを食べるくだりが紹介されています。双方の日記に載っているそうですが、私はウカツにも知りませんでした。

 荷風は、浅草にとても縁のある作家でしたので、一応勉強をしたつもりでしたが、この部分は「戦争で疎開中だから浅草には関係ないな」ということで見逃しました。

 この日の荷風の日記『断腸亭日乗』には「燈刻谷崎氏方より使の人来り 津山の町より牛肉を買ひたれば すぐにお出ありたしと言ふ。」とあり、二人ですき焼きの鍋を囲んだようです。

 「津山の町より」というのは、岡山県津山市のことで、二人とも戦争中は、岡山県に疎開していたのです。その疎開先での出来事です。

 荷風が足しげく通った浅草の店と言えば、蕎麦の「尾張屋」さん、洋食の「アリゾナキッチン」さん、「どぜう飯田屋」さんが代表で、「ちんや」も『日乗』に出ては来ますが、頻度は比較になりません。だから、すき焼きが好きという印象はありませんでした。

 8月14日も、谷崎の方から誘ったようですね。

 それにしても「牛肉を買ひたればすぐにお出ありたし」というのは良いですね!

 今とは肉の貴重さ加減がもちろん違いますが、肉が入ったから⇒会う、という順番がなにやら楽しい感じにさせてくれます。

 現代の文化人の皆さんも「ちんやにて牛肉を買ひたればすぐにお出ありたし」という具合に行っていただきたいですね。

 追伸

  誠に勝手ながら、8/31〜9/2まで店を休んでおります。遅い夏休みです。ご寛容をお願い申し上げます。

 休み中も、ブログは書き溜めがありますので、「予約投稿」でUPする予定ですが、Twitter(http://twitter.com/chinya6th)の方はつぶやかないと思います。よろしくお願い申し上げます。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 *「百味」については、こちらです。

*「かぶちゃん」との対談については、こちらこちらをご覧下さい。