記念講演
弊店の和食調理長・吉田裕一が東京都の「優良調理師」に認定されました。
これはスゴいことです。何がスゴいって、イノセ知事から貰ったんですからね、今となっては貴重です。
で、認定の記念講演をすることになりました。
と、そこまでは良かったのですが、どうも自由に話して良いわけではないらしく、都から御題が出されたのには弱りました。その御題は、
「すき焼き店における食育」しかも「世界遺産の件にも触れるように」との上意。
む、難しいですねえ。
弊店が食育に取り組んでいる点を御評価いただいた点は、まあ、有り難いのですが。
社長、相談に乗って下さいよ!と申しますので、まず整理からしてみることにしました。
さて、まず<子供の食育>ですが、弊店では以下のようなことをしています。
・作業場見学、肉切り体験
⇒国際観光日本レストラン協会の食育プログラム『夏休み親子体験』に参加
⇒台東区役所の『手作り工房マップ』に登録、常時見学を受け入れ。
・具材の栄養学
⇒小冊子『すき焼き百科』を作製・配布。平易に解説。
・外食する際のマナー
⇒これも『すき焼き百科』に掲載。
しかしですね、この位のことで、「食育」が出来ている、とはゼンゼン思えません。自分で言っては仕方ないですが、むしろ、
<大人の食育>の方が子供の食育より必要かも!と思ったりします。
・明治以降の食文化史を、概略で良いから理解していただき、日本の味覚への愛国心をもっともっと抱いて欲しいところ。勿論、それをお子さんに伝えていただきたい。
⇒『すき焼き百科』の歴史を説明した部分は、実は大人に読んで欲しい。
⇒「すき焼き通検定」試験を実施。
しかししかしですね、それだけでもゼンゼンだめです。
<本当の食育>が必要です。それは、
・日本人の正しい味覚を獲得すること。家族で、その味覚を共有していただくこと。
⇒お爺ちゃんと一緒に、お爺ちゃんが好きなすき焼き屋に行くのが良い。
そう、すき焼き屋の本業そのものが、実は食育なんです。ですので、
⇒三世代揃って御来店いただけるよう、販促努力をしている。
例:「すき焼き思い出ストーリー」投稿サイトを開設
例:「すき焼き川柳コンクール」を実施
例:ハート型牛脂『牛ゅとハート』を商標登録
結局薬局お子さんの味覚がちゃんと育たないと、ダメだと思うんですよね。だから、
<世界遺産登録>は目出度いは目出度いですが、楽観はできないと思いますよ。
・一般家庭の日本人は、どんどん味覚や調理技術を失っている。それを世界から指定されて、果たして本当に大丈夫なのか、と思う。
・素晴らしい料理屋さんの、素晴らしい料理だけを指定して貰った方が良かったのでは・・・とすら思う。
(今回遺産登録されたのは、日本人の四季の暮らしに根差した和食なのであって、料理屋の料理じゃありません、念のため。登録を推進したのが京都の料理屋さん達だったので誤解している人がいるかもしれませんが、違いますのでね。)
・日本人が「安さ」「利便性」(=いつでもいくつでも買えること)という価値を「正しい味覚」より、価値として上位に置いている限り、世界遺産登録されたからと言って、にわかに状況が良くなるとは思えない。
・和食店も多少の努力はしているが、ごくたまに食育プログラムを企画する位では、大勢を変えるに至るとは思えない。小学校の給食に「和食の日」「すき焼きの日」「天麩羅の日」「寿司の日」を強制的に造る位のことが必要と思う。
これが、私の現時点での、食育についての捉え方です。
食育冊子は作りましたし、見学会・体験会もやりますが、どうも、それだけで自慢する気になれないんですよね、私は。
祝賀ムードを盛り下げてスミマセン。
もっとも、以上の内容を講演会で、このまんま話させようというわけではありませんよ。
住吉史彦の『そこまで言って委員会』じゃあ、ないですし、都の主催ですしね。
やしきたかじんさんの御逝去を悼み、心よりお悔み申し上げます。
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毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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