食中毒業界の主役

造物主とは偉大なるものかな、と思います。

主は、人間が増長せぬよう、他の新たな生き物を使って、有効に懲らしめておいでです。

ノロウイルス(Norovirus)も、そうした生き物のように思えます。

このウイルスが発見されたのは1968年ですが、すぐに食中毒業界の主役には成らず、私が「ちんや」に入った1990年代中盤でも食中毒と言えば、腸炎ビブリオや黄色葡萄球菌がメインでした。

しかし最近は、すっかりノロ様が主役となり、この冬も浜松や広島で1.000人以上の人々を苦しめました。

原因食材はパンでしたが、このパン工場は衛生管理が杜撰な工場だったわけではないようです。

なにしろ困りますのは、ノロウイルスの「無症状保菌者」つまり、お腹の中にウイルスが多数いて、便をすれば周囲にウイルスをまき散らすのに、その本人は自覚症状がない、という人がいるのです。今回もそうでした。

ノロ様は人間の腸の中で爆発的に増えますから、とにかくそれが手につかないようにしないといけないのですが、それが難しい問題です。

用を足したら、まずパンツをはきますよね。それがダメなんです!

汚れた手を使ってパンツをはいたら、パンツにウイルスが付きます。

その後で手を洗ったとしても、履いたパンツを手で触ったら、逆にまた手にウイルスが付き、その手でパンを包装したら、ほら、食中毒です。

だからトイレの個室ごとに、パンツを脱いだままで手洗いが出来るような設備を設けないといけないのだそうです。

パンツを脱いだまま手洗いだなんて、ここまで人間にみっともない格好をさせることが出来るのは、ノロ様位のものでしょう。大したものです。

10から100個程度の、ごく少数のウイルスが食品についただけでも感染・発病するというから、実に困ります。

また、今のところ、有効な抗ウイルス薬が存在せず、培養すら出来ていないとか。罹ったら安静にして待つ他ないそうです。いやはや。

飲食店主としては、勿論努力はしていますが、大勢の人が出入りする店では完全に無菌には出来ません。御客様が持ち込む可能性もあります。

日々祈るしかありますまい。私の知人の飲食店主の中にもノロの食中毒を出してしまった方がいます。

日々祈り、万が一食中毒を出してしまった時のために、心の備えをしておくしかありますまい。

すべての声よ、主に向かいて歌え。アーメン。

 

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.424日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)