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とある市に151軒の、牛の肥育農家が在りましたとさ。
特段ブランド化とかは狙っておらず、地道に美味しい牛を育てようという人あり、一方畜産業としての効率を上げねば!と考える人もあり、要するに統一性を持って行動している産地ではありませんでした。
美味しい派の人達は長期肥育をして、脂の融点を下げ、熟成させた場合に旨くなる牛を育てようと考えていました。
効率派の人達は、とにかく畜舎の回転率が重要だ。だから短期間で脂がたくさん入る血統を導入することが大事だと考えていました。
そんな人達でしたが、次第に老舗ブランド牛産地の自民市が羨ましく感じられるようになってきました。なにしろ、自民市の自民牛は、自分達の牛の倍近い値段で取引きされていたからです。
牛のことなど何もご存知ない市役所の人達も、ブランド化をしなくちゃダメだ!と焚きつけにやって来ました。
よし、やってやろう!
自分達もブランド化をやってやるぞ!
という決意の下に付けた名前が、
民主牛。
ブランド立ち上げ、誠にお芽出とうございました。
さて、そんな経緯で誕生した民主牛ですが、幸運にも名前をつけた途端に追い風が吹きました。
人気絶頂の、お笑いタレントが旅番組で訪ねてきて民主牛を褒めちぎってくれたのです。
加えて、自民牛の個体識別番号不正表示問題。
不心得者の自民牛の生産者が牛の肥育記録を改ざんして、短期間しか自民市にいなかった牛を「自民牛」として売りさばこうとしたのです。国民の、自民牛に対する不信感が高まりました。
そうだ、民主牛の方が頑張っているぞ。しかもかなり美味しいらしいぞ!
と民主牛の評判は高まる一方でした。
が、残念なことに、それが終わりの始まりでした。
だって、元々統一性なんかない人達です。ブランド化したいというだけで纏まっていたのですが、ブランド化して⇒目立ったしまったのは失敗でした。
効率派の人達が育てた牛=美味しくない民主牛がいることが、ネットで、あっという間に知れ渡ってしまいました。
以来、民主牛推進協議会の理事会は、激論につぐ激論、いや、みっともない大人の口喧嘩の場と化してしまいました。
さらに悪いことに、そのように揉めていることが、これまたネットで知れ渡りまってしまい、「弱り目に祟り目」です。脱会者も続出。
いや、困った、困った。
ここまでイメージが悪くなっては、相場も下がる一方だなあ。
そうだ、名前を変えて、イメージも変えよう。
そうだ、そうだ。
そうして、またまた激論のあげく、やっとこさ付けましたとさ、新しい名前を。
名づけて、
民進牛。
以後お見知りおきを。
追伸、
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題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
第四話は「江戸の食文化として「どぜう鍋」を守る」(「駒形どぜう」六代目 渡辺孝之さん)。対談所は東向島の「ビー」さんです。
四六判240頁
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978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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