赤身信仰

最近「赤身信仰」とでも名付けるべき信心をお持ちの方がいます。

脂・霜降り=悪魔って感じなんでしょうか。

40歳代なのに、もう入信している方もおり、

霜降りは、もう無理なんだよー

などと、おっしゃいます。

たしかに科学的なデータを見ますと、

・豚の脂の融点=25-40℃

・牛の脂の融点=32-50℃

などと表示されていて、

「溶け出す温度が、人間の体温よりも高いものがいくつかありますね。それが体の中にはいった時に、サラサラなのか塊になるのかを想像してみてください。わたしがそれらを選ばない理由の一つです。」

というコメントが添えられていたりします。

しかしですね、長期肥育された、黒毛和牛のメスに限って申しますと、

融点は25℃位で、個体によって22℃などということもあります。

この脂は人間の体温で融けますから、体の中にはいった時にサラサラなのです。後でまったく胃モタレしません。

「ちんや」の脂は、そういうものばかりです。モタレませんし、脂が甘い感じがします。

もう無理なんだよーと言わずに「ちんや」の肉を試していただきたいと思います。

一方の赤身ですが、赤身なら皆消化が良いと思うとそれは違うと思います。

熟成させていない赤身は、タンパク質そのものですから、分子が大きく消化が悪いです。

これを熟成させますと、そのタンパク質が分解されてアミノ酸になり、消化しやすく、また美味しくなります。

だから熟成させた方が良いのですが、問題は、熟成させ易い肉かどうかです。

肉の表面を脂が覆っていれば、酸化・変質するのは脂だけですから、取り除けば良い話しですが、その脂が少ないと、すぐに赤身の部分まで変質を始めてしまいます。

だから、赤身だけの痩せた牛は熟成させにくい、ということになり、結果、赤身は熟成させていないことが多いのです。

要するに、

食べ易い脂も在り、

食べ易くない赤身も在る、ということなんですね。

分かりにくくて信仰しにくいかもしれませんが、これが、真実の教えです。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.688日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 

 

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)