2014年10月16日
とけるから、とける
とけるから、とける。
何のことかお分かりになりますか?
牛の脂の話しです。
では、分からない方の為に漢字で書いてみましょう。
融けるから、溶ける。
融けるとは、固形だった脂が融解し液体化することを言いますね。融ける音頭のことを融点と申します、イヤ融ける温度のことを融点と申します。
牛の脂の融点は、32-50℃と言われていますが、黒毛和牛は脂の融点が特別に低い牛で、特にメスを長期肥育した場合は、22-24℃でも融けます。
牛の世界平均より10℃融け易い奇跡的な牛なのですが、その話しはまたの機会にして、話しを元に戻します。
和牛の脂は、このように低い温度で融けますから、鍋で加熱すれば当然融けて液状になります。
その脂に溶けるのです。旨みや味が。
はい、こっちの漢字は「溶ける」であることに御注目下さい。
融けた脂が「溶媒」になって、色々なものを溶かすのです。肉の赤身から来た旨み成分や、割り下から来た塩分や糖分を溶かします。
旨み成分や塩分や糖分が脂に溶けるとどうなるでしょうか?
はい、味がマイルドになります。
脂が甘い、と感じる人もいるようですが、食品科学的に厳密には脂に甘味も旨みもなく、あくまで「溶媒」です。
「ちんや」の割り下だけを飲もうすると、とんでもなく甘っ辛い代物なのに、実際すき焼きにすると良い感じだと思う理由は、これです。
融けて「溶媒」となった脂に、甘味、塩味が溶けるから、そういう現象が起きるのです。
要するに、
とけるから、とけるのです。
分かるかなあ、分っかんないだろうなあ。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.690日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM Comments (0)