井戸の茶碗
「林家たい平師匠を囲む会」を開催しました。私が会長をしている「台彪会」の、夏の恒例行事です。
たい平師匠は、日本TV「昇天」イヤ「笑店」の大喜利メンバーで、「売れっ子中の売れっ子」と申して良い噺家さんだと思いますが、今年も私たちのために御来演下さり、本当に有り難いことでした。
で、今年の演目は「井戸の茶碗」。武士道を描いた、古典落語の名曲ですから、ご存じの方も多いかもしれませんね。
貧乏なのに身に添わぬ金銭をかたくなに受け取らない二人の侍を登場させて、欲よりも名誉を優先させる人の生き様を見せます。このように武士道を描いた一曲なのですが、描くと言っても、勿論そこは落語ですから、おおげさに描写して笑わせます。
清貧を貫く二人に金を受け取らせようと、狂言回し役のクズ屋が右往左往する場面を見れば、師匠は、やはり実力者なのだなあ、とあらためて感心させられます。
最後には、貧乏侍が持っていた茶碗が、茶の湯で珍重される「井戸茶碗」だと鑑定され⇒細川侯にお買い上げ、となってハッピーエンドに成るのですが、師匠は、鑑定人を茶人ではなくて、テレビ「なんでも鑑定団」で有名な骨董商・中島誠之助に変えてしまいます。
「鑑定団」の音楽を歌いつつ、自分の口から、
古典を冒涜するのはマズいよねえ!
などと言って、さらに笑わせます。
この一曲は、二人の侍、その間を使い走りするクズ屋、侍の間を仲裁する大家さんと、全ての登場人物が善人なので、演ずる側の噺家さんの間でも人気があると聞きます。
そして、それだけに、今のご時世にタイムリーでした。
私も含め、目をウルウルとさせながら聞きいっている人が沢山おいででした。
またお土産は、師匠が応援している石巻の缶詰。
震災後、被災圏外の工場を借りて缶詰の製造を始めた『木の屋石巻水産』さんのために、師匠がパッケージ・デザインを提供され、それが製品に成って、この日配布されたのです。
実は、武蔵野美術大学の落ち研出身なので、そういう特技がおありなんですね。こうした活動も素晴らしいことです。
終演後の懇親会に師匠も御参加下さいましたので、その席で私は師匠に申し上げました。
いやあ、本当に良いお噺でした。是非国会で演って下さい、「井戸の茶碗」を!
追伸①
藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に載せていただきました。
不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。
他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。
是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)
追伸②
9/3から9/7まで、「ちんや」は遅めの夏休みをいただきます。盆休みの代わりです。何卒、御諒承下さいませ。
このブログは、予約投稿により連続更新してまいりますので、ご愛読下さい。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて921日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。