外国人客を受け入れる店特集
御世話になっている銀行さんの気管支から、イヤ、機関誌から取材の依頼がありました。
なんでも、「クールジャパン」~最高のおもてなしで外国人客を受け入れる店特集」という記事だそうで、
「ちんや様の御店の紹介を中心に、外国人集客の取り組みなどについて、お話しをうかだいたいと思います。」
「外国人集客の取り組みなどについて、同業者やこれから事業を創める方へのアドバイスをお願いいたします。」
・・・ということのようです。うーん、アドバイスとは荷が重いですなあ。
さて取材構成ですが、
<お店の経緯>はい、店のHPを見て下さい。1880年に創業し、2001年に不肖・住吉史彦が六代目として事業を継承しました。
<お店・メニューの特徴>同上です。
<現在の活動>
⇒この10年ほど「心に残る思い出を!」というテーマを掲げ、御客様の特別な日に使っていただける店で在りたい!と努力しています。
具体的には、
「すき焼き思い出ストーリー投稿サイト」を開設して投稿を募っています。
ただ今「すき焼き川柳」の投稿を募っています。こちらはアナログ=手配りしています。
こういう企画が出来るのは、すき焼きならではでしょう。投稿の内容は、ご家族ですき焼きを食べた思い出話しが圧倒的に多いですね。
それから、「ちんや」メンバーズカード会員さん限定の制度ですが「記念日割引」という制度を作り、その日は割引になります。御客様が自分で、日を設定できるのが特徴です。
『牛っとハート』という商標の、ハート型の牛脂を開発しました。特許庁に登録済みです。これを記念日=お誕生日とか結婚記念日とか、そういう場合に使っています。割引だけではないんです。ビジュアル的にインパクトがありますので、ツイッターやフェイスブックに投稿していただけて、宣伝になります。
これらの活動はもっぱら日本人の、非観光客相手の活動ですね。しかし間接的な観光客対策に成っていると考えています。観光客というものは、地元で評判の良い店に行きますからね。
エージェントさんへの営業活動などは一切していませんが、地方の御客様でもご本人が弊店を見つけて指名して⇒エージェントさんに手配依頼をして下さいます。だから結局地方の団体さんにも来ていただいています。
<社長様個人の活動も併せて教えて下さい>
⇒ええっ、個人の活動ですかあ、それは長くなっちゃいますよ。まずは弊ブログのプロフィールをご覧ください。そう、色々やってますけどね、一つだけ挙げれば「すきや連」ですね。
全国のすき焼き屋とすき焼き愛好家の団体「すきや連」は、私とフードジャーナリストの向笠千恵子先生とで創りまして、毎年3回ほど会合を持っています。会合の中身は、講師を呼んでの勉強会とか産地の見学会とかです。その後は勿論で皆で、すき焼き大宴会をします。既に16回例会を開催しましたが、毎回50人以上が参加して大盛況です。
もう同業者が足を引っ張り合う時代じゃあないんです。それぞれのすき焼き屋が強い個性を持って、それをPRして、御客様が、その違いが分かるようにならないと面白くないですよね。「すきや連」の宴会では、すき焼き同士が、お互いの違いを話題にしながら、実に楽しく盛り上がります。一般の方にも、いつか違いを分かる楽しさを知って欲しいですね。
<外国人集客の取り組みについて。御客様全体に占める海外の御客様の比率や利用目的(ビジネス・プライベート)など。>
⇒弊店は単価が安くはなく、予約して見える方が多いので、ご想像ほど外国人比率は高くないです。5~8%程度と思います。その中のビジネス対プライベートの比率では、一般のお店よりビジネス率が高いと思います。半々位でしょう。
日本人については、比率は逆でビジネス率は低いです。原因としては浅草という土地柄が、まずありましょうし、弊店が、先ほどご紹介したように「心に残る思い出を!」という方針ですので、自然とビズネスよりご家族連れでの来店が多くなっています。
外人さんの場合、予約をすることがハードルになって、プライベート率が低いですね。日本側にビジネス・パートナーがいれば、その方が予約をしてくれますから、そういうパターンで来店なさる割合が自然と高いです。
「取り組み」ですが、だいたいですよ、「外国人客」と一概に括ることに、私は賛成しません。最低でも3つに分けないといけません。
<まずは純粋の個人旅行客>
たいていはブログとかネットで情報を収集して、個人で予約をするか、ホテルのデスクを通じて予約してきます。「日本の普通の姿に触れたい」という意識の方が多いですから、外人だというだけで、ナイフ・フォークをいきなり出すと、不快がられることすらあります。むしろ箸を使う体験をしてみたいからですね。
こういう方の場合は、御不便を取り除く、ということを主眼にすべきです。
どういう支払い方ができるのか、禁煙対応はどうなのか、アレルギー対応はどうなのか、が入り口でハッキリ分かることが大事と思います。
それから日本体験をしていただく、ということで弊店では、なるべく外人さんに日本語を話していただいています。
日英対照表を作って配っていますが、
Excuse me! と
Sumi-masen! を並べてありまして、外人さんが、Sumi-masen!と言うわけです。楽しいですよ。
<日本人のビジネスパートナーとご一緒の場合>
この場合、そもそも日本人が外国人を接待する、ご接待の席なのだ、というのがポイントです。
たいていは日本人の方が外人さんに色々気を遣われるので、その御指示に従うか、あるいは気の遣い方が失礼ながら不十分であれば店の者がフォローします。
しかし実際は「気の遣い方が不十分」なケースはほとんどなく、むしろ過剰なケースが多く、外人さん御本人は、いつも通りを好む場合が多いように思います。でも、そうは言っても施主は日本人の方ですから、御指示があれば、それにはよほどのことがない限り従います。
<団体旅行で見える場合>もあります。その場合エージェントさんが入りますが、すき焼き屋の事情を良くご存知ないエージェントさんも多く、丁寧に説明しないといけません。
<国際親善プラン導入の経緯>
日本人が外国のゲストを招待する場合、つまり上の事例であっても、そのことを御客様(日本人)がこちらに伝えて下さらないケースが多いです。それを発見するのが、プラン導入の目的です。
国籍が事前に分かっている場合は、卓上にその国の小旗を用意しておきます。単純ですが、これは喜ばれますよ。
<2020年に向けた対応>
純粋の個人旅行客の方の「御不便を取り除く」を、もっと進めます。
例えば、アレルギー対応ですが、甲殻類とか蕎麦とか、そういう食材を絵にしたシートを玄関に備え付けておき、外人さんがチェックを入れてから、中へお通しするようにしようと思っています。
一番頭が痛いのはイスラム教徒の方の「ハラール・ミート」です。先日も浅草商店連合会・浅草料理飲食業組合で勉強会が在りましたので、勉強してきましたが、ハードルが高いですね。
<外国人から見た日本の良さとは>
外国人が相手だから、実際問題として何か仕事の仕方が変わるわけではないですし、変えるのはおかしいですね。
でも、2020は観光業に従事する人間の、気持ちのリニューアルには成り得るかもしれません。どうも、このところ東京人という人種は、日本の地方の人が東京に来るのは当たり前と思ってしまっていて、遠来の客を歓待しよう、という感覚が鈍化しているように感じます。オリンピックを機会に、そうした当然の感覚を取戻さないといけないな、と思っています。
観光業の仕事というものは、どんなに末端の仕事でも、東京を代表して日本を代表して従事するものです。自分一個のためだけに働いているような人物には、決して務まりません。
もし「自分一個のため」という気分が、いつの間にか入り込んで来ているとしたら、これを機会に断然リニューアルして行きます。
とりあえず、こんなところでよろしいでしょうか。
追伸①
単行本『東京百年老舗』に載せていただきました。
21人のフォトグラファーたちが、歴史と伝統を現在に伝える「老舗」の魅力を余すことなく写しだした写真集です。
時代が変わっても、変わることのない老舗の魅力が、ここにあります。
くわしくはこちら↓です。
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は366人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.317日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。