ちんやの経営理念とモタレない肉③

御蔭様にて弊ブログは、本日999日連続更新を達成。1.000日までカウント・ダウンに入りました!

毎度のご愛読に心より感謝いたします。さて、

知人の社長FJ田さんが、弊店で会社の忘年会をして下さることになり、住吉さん、宴会の前に社員向けにすき焼きの話しをしてくれませんか?という依頼を受けました。

以下はその原稿です。皆様にもお読みいただきたく公開しています。

長いので、一昨日から3日間に渡って公開しています。今日が三日目です。さて・・・

では、そのモタレないとは、どういう状態のことを言うのでしょう。

二つ条件があります。

①    肉の中にアミノ酸が多いこと

②    脂肪の融点が低いこと

分かりにくいと思いますので、非常にザックリとお話ししますね。

肉を熟成させると、肉の中のタンパク質がアミノ酸に変わります。分子が小さくなるのです。分子が小さいので、消化しやすく、そしてアミノ酸は旨みの元でもありますので、味も旨いのです。

食べものの世界では、一般に分子の大きいものは美味しくなく、小さいのが美味しいのです、ザックリですが。

アミノ酸を作るのは牛の体内の酵素です。その働きで自然に置いておくだけで、そうなります。

もっとも「自然」と申しましても0℃~2℃です。常温で置いておけば、熟成は速く進みますが、品質がいたんでしまいます。だから冷蔵するわけですが、冷蔵すると望ましい熟成度合に成るまで、およそ一か月を要します。

そう、皆さんが今日召し上がる肉は、一か月前に亡くなった牛の肉なのです。.

ここがスーパーの肉と「ちんや」の肉が大きく違う所です。

スーパーの肉は一か月ではなく、4~5日目に売られています。商品回転率を高めたいから、そうしているのですが、それでは旨くもなく、かつモタレます。

赤身ならモタレない、と思っておいでの方が多いですが、違いますので御注意下さい。

今日は、その違いを体感していただきます。

もう一つの条件「脂肪の融点」についてもお話ししましょう。

牛の脂肪の融点は、他の動物の肉の融点より、一般に高いです。だからモタレるのです。

しかし、どの牛も同じなのではなく、育て方によって、融点が低い脂肪にすることが出来るのです。

本日出される牛の脂肪は、部屋の温度で置いておくと、だんだん融けてきますが、それが望ましいのです。それが消化しやすい脂肪です。

外見上脂が少ない肉でも、融点が高ければモタレますので、ご注意願います。

さて、その脂肪の融点を、牛を屠殺した後に我々が変えることは出来ないので、肉屋の仕事としては、脂肪の融けが良い牛を選ぶことが大事です。選ぶことつまり所謂「目利き」です。

そして「ちんや」の職人は、一瞬指で肉を触るだけで、その「目利き」をすることができるのです。

脂肪内部の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率が変わると、融点も変わるのですが、そんなことを、分析器で測定していたら時間がかかって仕方ないです。

一方「ちんや」の職人は、一瞬触るだけで「目利き」できます。そうできるのは、職人としてキャリアを形成してきた、長い人生の時間が指に乗っているからです。

以前、陶芸の人間国宝・浜田庄司先生は、たった15秒で、大きな器に釉薬を流し掛けました。そして、そのことを「15秒プラス60年」という、有名な言葉で表現しました。

15秒とは実際に釉薬を流し掛ける時間、そして60年とは陶芸家としての鍛錬のために費やした長い歳月を意味していました。同じことが肉の職人にも言えると思います。

・熟成に一か月

・脂肪の目利きに「15秒プラス30(60)年」

①旨くて②モタレない肉を提供するため、これだけの時間がかかります。

しかし時間をかける価値はあります。

「思い出を作るすき焼き店」~特に御家族の思い出を作る店

しかも、何世代にも渡って、「思い出を作るすき焼き店」

そう在り続けたいと思えば、時間をかける価値があります。

ローマは一日にして成らず。

旨い肉も一日にして成らず。

お後の肉がよろしいようですので、この辺で。

追伸①

ケーブルTV局J:COMの、「村野武範の馳走百景」に出演させていただきます。

是非ご覧ください。放送日は以下の通りです。

11/27(火)夜10時~

11/28(水)深夜0時30分~

この番組と視聴方法について詳しくはこちらです。

追伸②

ワイン専門誌『wi-not?』vol.3の「浅草老舗七人衆 「冬泡」を啜る」というコーナーに私が出演しています。
是非ご購読下さい!

この本について詳しくはこちらです。

ご購入はこちらです。

追伸③

「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

 この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

 その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

 現在の笑顔数は312人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

 皆様も、是非御参加下さい!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて999日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 

Filed under: すき焼きフル・トーク,今日のお客様 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)