郷土料理伝承学校

「郷土料理伝承学校」が開講しました。

主催は農水省の外郭団体ですが、その「校長」は「すきや連」でお世話になっている向笠千恵子先生、出講する講師陣の中にも各地の「すきや連」メンバーが入っているので、私も聴講することにしました。

農水省が「農山漁村の郷土料理百選」を平成20年に選定した時、

向笠先生が選定委員の一人として選考にあたられましたが、その時識者の委員会の他に一般からの人気投票も行われました。

配布された資料によりますと、集まった7万通以上の投票では、山形県の芋煮と鹿児島県の鶏飯が圧倒的な票数を集めていました。

山形出身・鹿児島出身の方々がそれほど大勢いるはずはありませんから、他県人が投票しています。郷土料理が地域を結びつけるだけでなく、既に日本全体を結びつける食にもなっていることが分かります。

実際、観光の目玉になっていることも多いですね。

だんだん郷土料理に光が当たって来たのは、そういう事情と思います。「△▽グランプリ」のように、いささか逸脱気味の「郷土料理」もありますが、全般的には良い傾向と申せましょう。

さて、その初回の講義は向笠校長ご本人の講義。各地のユニークな郷土料理の紹介があり、試食品も配られました。

その中で私が面白いなあ、と思ったのは北九州小倉の「糠(ぬか)炊き」です。鰯や鯖などの青魚を煮つける時に、糠も入れるのです。

糠味噌由来のアミノ酸や有機酸が旨味をもたらすだけでなく、乳酸がpHを低下させるので青魚独特の臭みが抑えられるます。今回初めて試食しましたが旨いものです。

そもそも糠味噌料理は、小倉藩主・小笠原家の、戦場での保存食だったようですが、やがてそれが小倉の旧家や庶民の間にも広まったようです。

そして、さらにそれが青魚と結びついたのは、なんと日本の近代化と関係があるそうです。

明治以降九州で八幡製鉄所や筑豊炭鉱が操業を始めましたので、多くの肉体労働者が必要になり、当然その労働者の胃袋を満たす料理が必要になりました。

安い青魚をおいしく食べることができ、しかも甘辛くて沢山の白飯を食べたくなる、「糠炊き」が重宝された理由は、そこです。食の近代化遺産と言っても良いと思います。

「糠炊き」は、製鉄業や鉱業の衰退にともない、いったん衰えますが、それが再度、向笠先生のような識者に再発見されて、注目されるようになったようです。

私は久しく小倉に行っていないので存じませんでしたが、高級糠炊き料理店があったり、通販サイトさえあるようです。

日本には、こういう歴史を感じさせて、かつ健康的な食品がまだまだあるのだなあ、と感心しますね。今後の講義が楽しみです。

ところで、この講義に向かう時、私はタクシーに財布を忘れました。

講義の前に次回「すきや連」の打ち合わせがあったのですが、時間が延びて、講義に遅刻しそうになり、大慌てで車を降りたので、その時にうっかりしたようでした。

で、その財布は、私が講義を聞いている間に戻って来ました。

タクシーが引き返して来て、しかも運転手さんは、私が

3時からの講義なので、少し急いでます!

と言ったのを覚えていて⇒講演会場の守衛さんに相談して⇒「3時からの講義」の参加者リストの中から、落とし主(=私)の名前を発見したのです。

落とし主は、全く気付かず、講義に熱中していたんですけどね。

マルコ―タクシー株式会社の、車番0014の運転手さん、有り難うございました。

まだまだ、あるんですね、美談が、この国には。

追伸①

 BSテレビ朝日「幸福の一皿」~美味しさの物語 に出演させていただきます。是非ご覧ください。

 「食卓の華!すき焼き」

 11月23日(金) 20:00~20:54 オン・エアです。

 この番組について詳しくはこちらです。

追伸②

ケーブルTV局J:COMの、「村野武範の馳走百景」に出演させていただきます。

是非ご覧ください。放送日は以下の通りです。

11/20(火)夜10時~

11/21(水)深夜0時30分~

11/27(火)夜10時~

11/28(水)深夜0時30分~

この番組と視聴方法について詳しくはこちらです。

追伸③

「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

 この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

 その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

 現在の笑顔数は300人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

 皆様も、是非御参加下さい!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて987日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 

Filed under: すきや連,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)