肉談義―日本短角牛をめぐって
7/16に、食肉卸A社のA社長が「ちんや」へ見えました。
7/12の「第6回すきや連=日本短角牛の、すき焼きを食す会」の日には、ご都合が悪く、ご参加いただけなかったのですが、ご興味はお持ちいただいていたようですので、早速、日本短角牛についての、肉談義をもちかけてみました。
短角牛ほど、肉屋の間で、肉談義の対象になる牛はないのでは、と思います。要するに、賛否があるのです。
7/12に、「すきや連」を、私の店「ちんや」で 開催したことは、このブログの、7/13号から7/17号までに書きました。「ちんや」なりに、短角をすき焼きで、おいしく食べられるよう工夫して、お出ししてみました。
7/15号、7/16号に掲載した通り、ご出席の皆さんからいただいた寄せ書きには、「短角美味しい!」などの声が多く、短角をすき焼きで、おいしく食べることは、工夫次第でなんとか可能と思えました。私個人は。
しかし、それはむしろ、肉屋的には、厄介な話しでもあります。
現在の肉の格付けは、黒毛和牛の、霜降りの肉を上位に位置づけるシステムですから、黒毛和牛でなく、霜降りでもない肉なのに、旨い肉が存在すると、それを幾らに値付けしたら良いものか、困ってしまうわけです。
また、短角は肉質が、濃い味付けにあわないので、料理方法によっては、歴然と美味しくないことがあります。さらに短角は冷凍で流通している場合が多く、その場合も当然、美味しくありません。美味しい場合と、そうでもない場合があるので、ますます、値付けに困ります。
加えて、短角は肥育頭数が8千頭程度と、黒毛の16万頭に比べて、圧倒的に少なく、その分、消費者から認知されておらず、販売しにくいです。この点も値付けしにくい要因です。
肉屋的に厄介というのは、そういう次第です。
日本短角牛が、貴重な和牛の1種で、育て方も体に良いと分かっていても、肉屋さん方が熱心に取引しようとしないのは、そういうわけです。むしろ、レストランや一般消費者の側が進んで買い求めているように見えます。
その辺りを肉屋さん方が、どのように説明づけるか=平たく言うと、どう言い逃れるか、が「談義」のメインテーマです。この「談義」には、それぞれの肉屋さんの考え方が投影されるので、面白いことになります。
10年くらい前なら、肉が硬かったり、臭みが感じられたりする短角があったので、
「いくら体に良くたって、マズイものはマズイよ!」
の一言で、「談義」は終結しましたが、「北十勝ファーム」の上田金穂さんらの尽力で、そういう課題がかなり克服されてきています。
個人的には、短角の肉が3段階くらい旨くなった、と感じています。「マズイよ」でかたづけられない状況と思います。
さて、どう言い逃れるか、高麗屋。
東大寺再建の為に勧進を行っているとは、偽りであろう!
短角をめぐる「肉談義」が、当分面白そうです。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
*短角牛の、すき焼きの食べ方については、このブログの7/14号をご覧下さい。