神戸ビーフ
次回「すきや連」は「ホテル竹園芦屋」さんで開催することに決まっていますので、先日うちあわせと会場の下見に行って参りました。
さて「竹園」さんはホームページのトップに「JR芦屋駅前にある美味しいお肉(特選但馬牛)を食べることの出来るホテルです」と表記しています。さすが肉屋発祥のホテルと思いますが、ここで質問です。
「但馬牛」って何でしょう。
兵庫県とは言えば「神戸牛」が有名ですが、「神戸牛」は「但馬牛」ではないんでしょうか?
はい、もちろんそれも調べて来ました。
答え=「神戸牛」は「但馬牛」です。「但馬牛」の中の、一定の基準を満たした牛を「神戸牛」と言っているのです。
基準は「神戸肉流通推進協議会」が定めています。コピペしますと・・・
・兵庫県内の繁殖農家(指定生産者)のもとで生まれた
・兵庫県内の肥育農家(指定生産者)が最低月齢28カ月以上育てた
・メスでは未経産牛、オスでは去勢牛
・脂肪交雑(「サシ」の入り具合)はBMS値No.6以上
・枝肉重量がメスでは230kg~470kg、オスでは260kg~470kg
です。
これについて私見を言わせていただけば、
・仔牛の生産者を県内に限っているのは良いことです。他県から仔牛を導入している所が多いですからね。
・肥育期間を定めているのは良いことですが、28ヵ月では米沢牛の32か月以上に比べて見劣りしますね。
・性別は、やはりメスに限って欲しいところです。経産牛(出産を経験したメス牛)でも良いと私は思います。肥育期間が短いのも、オスの去勢牛をOKにしているからでしょう。
・体重制限が在るのは良いことですが、450kg以下だった重量基準を2006年に470kg以下に上げてしまったのは気にいりません。これ以上増やさないで欲しいものです。
・・・このように高級但馬牛=神戸牛と思っていただいてもOKなのですが、高級但馬牛をあえて「神戸」と言わず「但馬」として売ることも出来ることは出来るので、完全に高級但馬牛=神戸牛とは言えません。
そもそも、こういう奇妙なことが行われている理由は二つあります。
第一の理由は、海外で「Kobe-Beef」が有名だからです。
このブログの2013年9月11号に書きました通り、神戸に牛肉を普及させ「神戸ビーフ」の基礎を築いたのは、明治時代の外国人キルビーとハンターでした。以来「神戸ビーフ」は海外で有名です。
神戸で牛は飼っていないのにね。
もちろんブランドというものは産地ブランドに限ったものではなく、「千住葱」のように千住で葱は育てていないのに葱市場のある地名をブランドにしている場合もありますから、別に不当なものではありません。
「神戸」は「千住」に近いケースで、飼っていないのに有名だったものだから、やはりそれはブランドとして整備しようということになったわけです。
第二の理由は、但馬の公使が有名、いや、但馬の仔牛が有名だったからです。この血統は、脂の融点がとても低い血統で、おそらく世界一低いです。
この血統の仔牛は、以前は地元で最後まで肥育されるより、むしろ、松阪や近江へ連れて行かれました。仔牛のブランドとして有名だったのです。
但馬すなわち兵庫県北部から、はるばる松阪まで牛を連れて行ったわけで、大変なことです。それだけ但馬の仔牛が欲しかったのです。
このように「神戸ビーフ」はそもそも産地ブランドではなく、流通地のブランドであったのに、同じ県内に仔牛のブランドがあったので、それを定義に取りこんだのです。
・そもそも流通地のブランドであった
・同じ県内に仔牛の有名な産地があった
という二重の特殊性の故に、牛がいない土地(=神戸)の地名を冠したブランドが出来たのです。
但馬国が摂津国と合併して兵庫県に成らなければ、こういうことには成らなかったかもしれませんね。
分かりにくいぞ!
と思った方、文句は初代兵庫県知事の伊藤博文に言って下さい。
以上のことは、私のようにブランドにこだわらず「旨い牛や旨い」という立場の人間には、さして重要なことではありませんが、一応、まあ弊ブログの読者の皆さんの為に解説しておきました。
あー疲れた。
追伸
一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。
タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
是非是非お求めください。
弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。
是非。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.791日連続更新を達成しました。