福井の伝統野菜
向笠千恵子先生が「校長」をしている「郷土料理伝承学校」を聴講して来ました。
「郷土料理伝承学校」は、食の最前線で活躍している生産者、食品流通業者、食材研究家、料理人などが地元の郷土料理を語るもので、今年で3年目。
日本各地の農山漁村において、その風土や歴史、先人の知恵とともに脈々と受け継がれてきた郷土料理を、伝え広めていくことを目指しています。
さて私が聴いた回のテーマは福井の伝統野菜で、講師は元福井県農業技師の玉井道敏さんでした。
伝統野菜は、淘汰を繰りかえしながら何百年も生き続けてきた野菜ですが、近年食材の流通が画一化・標準化する中で、すっかり居場所を狭めて来ました。
しかし1980年代に、その傾向を憂えた故・高嶋四郎・京都府立大学名誉教授の指導の下「京の伝統野菜」が定義付けされました。
今回の講師の玉井さんは、その高嶋教授の薫陶を受けた後福井県庁に入り、福井の伝統野菜を掘り起こす活動をなさって来ました。
今では東京都を含む20県ほどが伝統野菜に力を入れていますが、福井県は早い事例と申せましょう。
福井の場合、伝統野菜を「その地域で自家採種しながら、100年以上作られている野菜」と定義していて、種を自分で獲ることをポイントにしています。
伝統野菜の農家さんは、最近では「DNA遺産」として関心を持たれるようになり、行政や市民団体の支援を受けられるようですが、指定野菜28種の中には「継承者が一人だけ」「いったん断絶して復活した」というのもあったりして、現実はなかなか厳しいようです。
そこで県庁は、そうした野菜を製品化・六次産業化して、ブランドにしようと考えているようです。
と、いう次第で野菜を製品化することになるわけですが、福井は蕪の名産地なので、出来上がりは、
漬物。
試食の漬物をたくさん食べている内に、私は、
うーん、すき焼きの付け合わせにしたいなあ!
と思いました。
「ちんや」の店でも最近すき焼きの付け合せにマイタケのピクルスを出していますが、偶然にも福井の人も赤蕪のピクルスを製品化していました。これもすき焼きに合いそうです。
すき焼きは甘!辛!旨!の三味が圧倒的なので、酸・苦が足りません。そこを蕪の酢漬けが補って良いと思います。
言い方を変えますと、酸・苦が無いと牛鍋などと申すものは、ジャンクフードと変わらない存在に成ってしまいます。是非漬け物・ピクルスと一緒に食べていただきたいと思います。
それにしても、漬物オンパレードはチト辛かったですなあ。
奥井さんの昆布も在るわけだし、試食は鍋が良かったかと・・・
追伸
一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。
タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
是非是非お求めください。
弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。
是非。
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