フィガロの結婚

学校の同期生がオペラ歌手に成っていて、公演があるというので出かけてきました。

演目はモーツァルトの「フィガロの結婚」。

「フィガロ」は私にとって、とても懐かしい曲です。私のオペラ鑑賞デビューが、この曲だったからです。中学生でした。

父からオペラの券を買ってあげるよ、と言われてから公演当日まで間がありましたから、当時50~60回はCDを聴き込み、譜面も読み込んで、曲をほとんど暗記した記憶があります。

そう、このブログでは歌舞伎とか邦楽のことを書くことが多いですが、私はかつてクラシック小僧だったのです。

私自身の結婚式の時も、楽団を雇って、BGMに「フィガロ」を流してもらったものでした。

さてさて私の話しはそれ位にして、今回の話しですが、同期生の演じる役はスザンナでした。フィガロと結婚する娘の役ですから、主役ですね。

でも主役なのにアリア(=独唱する場面のこと)は、全28曲中、第27番の一曲だけです。

これは冷遇というわけではなく、この傑作には脇役に面白いキャラクターがたくさん出て来るので、モーツァルトはそのキャラクター達にも名場面を割り当てないといけなかったのです。それでスザンナのアリアは一回だけなのです。

ですので、当夜の拍手要員である私の、最も重要かつ唯一の任務は27番が終わったところで、正しいタイミングで勢いのある拍手を叩き入れることです。まあ、歌舞伎の「おおむこう」みたいなものです。

フライングも遅すぎもNGですから、私は前夜書棚から以前使っていた総譜を引っ張り出し、予習をすることにしました。27番は消え入るように終わりますから、間違えたらかなり格好悪いです。しっかり覚えないといけません。

そうして向えた当日、完全に曲を覚えたつもりだったのですが、公演中私は急に不安になってしまい、25番の辺りで持参した総譜をカバンから引っ張り出して、暗い客席で確認をしないといけませんでした。

うーん、客が緊張してどうするんだ・・・

と思っていると、もう彼女は27番に先行するレチタテイーヴォ(=語るよう歌う部分のこと)を歌い始めました。

やがて美しいメロデイ―の第27番「さあ早く来て、いとしい人よ」が始まり、後半に出て来る高音の難所もクリアして、無事終了。

うん、いいね、良かった、おめでとう。

パチっ!パチっ!パチパチパチー

いやいや、チト緊張しましたが、こちらも無事任務完遂。

後は打ち上げで飲むだけですな。

Tutti a festeggiar!

あ、最後になってしまいましたが、スザンナ役は富永美樹さんでした。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.672日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)