簡易洋食
旧知の青木ゆり子さんが、
『日本の洋食:洋食から紐解く日本の歴史と文化』(ISBN-10: 4623082911)
という本を出されました。
その執筆過程で、浅草の洋食のことを教えて欲しいというご依頼がありましたので、色々ご案内申し上げ、そして「食堂の洋食を見落とさないで」と申し上げました。
洋食を考える場合、洋食専門店に注目するのが勿論優先ですが、いろんな料理を食べられる食堂も洋食の普及・洋食の大衆化に寄与したことを忘れてはいけないと思います。
その代表格として、今回の御本の中では「須田町食堂」を採り上げ、その後身で浅草に現存する「聚楽」さんを採り上げていただきました。「須田町食堂」は「簡易洋食」の暖簾を掲げて、1924年に東京神田須田町でスタートしたのです。
が、今日の「聚楽」さんに「簡易洋食」の気配はありません。「聚楽」さんは1940年頃には80店以上のチェーン網を築き、戦後にはホテルや旅館を買収、近年は他社のフランチャイジーになる事業まで開始して巨大産業と成ったので、「簡易」な雰囲気ではなくなったのだと思います。
で、今の浅草で「食堂の洋食」を伝えるものは「水口食堂」さんの
「いり豚 水口オリジナル」
だと思います。
「いり豚」とは「炒り豚」のことで、豚肉と大量の玉ねぎを特製ソースで炒めてあります。そして注目点として、水口さんの「炒り豚」はカレー風味です。これは大変食欲をそそる食べ物で、この御店の名物になっています。
青木さんが「本が出来ました」と浅草を再訪してくれたので、今回は「水口炒り豚」に挑戦していただきました。
「水口炒り豚」は「カレー蕎麦」、「ちんや」の「カレーオイル入り溶き卵」と並んで、浅草の洋食屋以外の洋食の、注目すべき一例だと思っています。一部自称(笑)
『日本の洋食:洋食から紐解く日本の歴史と文化』(ISBN-10: 4623082911)、皆様も是非ご購読を。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて3.015日連続更新を達成しました。
すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。