江戸東京・伝統野菜

東都のれん会「東若会」の例会に参加しました。
今年3月に「東若会」の幹事長を退任しまして、今後は気楽に参加できると思うと、嬉しい限りです。
さて今回の会場は、麻布十番の会員店「総本家 更科堀井」さんです。言わずと知れた名店ですね。
そして今回の酒肴は、いや趣向は「江戸東京野菜の夕べ」ということでした。江戸東京・伝統野菜研究会の代表・大竹道茂さんによる講演を聞いた後、江戸東京・伝統野菜を使った食事会という流れです。
大竹さんは「すきや連」に熱心に参加して下さるので、私は旧知なのですが、弊ブログでは「江戸東京・伝統野菜」を紹介したことが、そう言えばなかったので、ここに紹介しておきます。
「江戸東京野菜」は、種の大半が自給または、近隣の種苗商により確保されていた昭和中期(昭和40年頃)までの、「固定種」あるいは「在来種」を言います。
有名なのは、練馬ダイコン、亀戸ダイコン、谷中ショウガ、寺島ナスといったところでしょうか。
ここでポイントなのはF1を排除している点です。F1とは超速い車のレースのこと、では勿論なく、野菜の一代限りの交雑種のことです。
野菜の性質の中で、収量が多いとか、
同時に実が獲れるとか、
皮が強くて、運び易いとか、
農作業上都合の良い形質を持っている親と、普通の親を受粉させた場合、遺伝の法則によって、子には一代に限って強い方の形質だけが現れるので、それを利用するのです。同時に実が獲れる子ばかりが育てば、収穫作業が一回で済むので楽ですね。それを利用するのです。
ところが二代目(F2)(孫)となると、弱い方の形質を持った孫も出て来てしまうので、それは使いません。つまり農家さんは種を取って置くということをせずに、翌年も種の会社から種を買って植えるのです。現代農業では、これが主流です。
ここで問題になるのは、F1の種の獲り方です。
自家受粉されてしまっては、そっちの子が育ってしまい不都合ですから、膨大な手間をかけて、オシベを全部取り除くか、もう一つの方法として、花粉を作れないオシベがつく異常な親を使う、という方法もあるのです。
この異常な親を「雄性不稔(ゆうせいふねん)」と言うらしいですが、かえって分かりにくいので、動物に例えますと男性不妊とか無精子症に当たります。普通の親のオシベを全部取り除くのは、大変面倒なので、そういう親を選抜して使っていくのです。
ここで指摘しておきますが、現代農業では農家さんは種を獲らないのです。毎年大手の種商から便利な種を買うのです。上で書いた「F1の種の獲り方」は、各農家さんではなくて、種メーカーがやります。
そして結果、その農村の土壌に合った在来種はなくなって、大手の種商が開発した便利な、そして残念な親の性質を継いでいるかもしれない種だけが、この国に遺って行くのです。
これは「遺伝的多様性の喪失」という観点で、実に牛の世界に似ています。
そんな中で江戸東京・伝統野菜研究会のような方々だけが在来種を遺しているのです。
トホホな現状でしょう?
でも、これが現実です。お見知りおきを。

あ、お料理はどれも美味しかったです。
「川口エンドウ」と海老のかき揚げがかなり美味しかったです。野菜には当然苦みがありますが、揚げて海老の旨味と一体になり、そこへ塩味を付けることで非常に美味しく感じられました。
御馳走様でした。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて3.008日連続更新を達成しました。
すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。

Filed under: ぼやき部屋,色んな食べ物,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)