復興予算

 大震災の直後は、浅草においでなる観光の御客様が激減しました。さらに、その後も「自粛ムード」や「食品への不安」で、弊店も営業上のダメージを被りました。

 特に去年の夏までは、汚染された稲藁を食べた牛の肉から高い放射線量が出て問題になりましたね。稲藁問題の時は民主党の先生から、「すき焼き屋さんを助ける予算が無くて申し訳ない」と謝られました。

 だから弊店も広い意味では被災者だと思っています。

 しかし、だからと言って「復興予算」を浅草や「ちんや」へ廻して欲しいとは思いません。直接津波や原発の被害に遭った方のために使っていただきたい、というのが普通の心情でしょう。

 たしか、そういう目的のために増税する、という話しだったと思います。

 ところが、そう思わない方が、日本政府の中にはおいでらしく、「復興予算」に「外客(=外国人旅行者)誘致緊急対策事業」として14億円が計上されたそうです。そのお金は「震災後、大幅に落ち込んでいる訪日外客を早急に回復させるため」に使われます。

 14億円のうち8億円が「受け入れ環境整備事業」です。外国人旅行者が日本の観光地を訪れたときに、言語面での障害を感じさせないように多言語による路線案内などを設置します。

 要するに、駅や要所の案内看板を、英語と中国語と韓国語で表記するのです。その、案内版の架け替えに「復興予算」を使う、というザ・拡大解釈です。

 しかもです、その実施地域がほとんど被災地の外なのです。対象となる地域は沖縄から北海道まで全国26カ所ですが、うち被災3県の中にあるのは岩手県の平泉、宮城県の松島、福島県の会津若松の3カ所に過ぎないそうです。石垣島など全く関係のない地域も混じっているとか。

 どうなんでしょうね、これ。

 だいたいですよ、案内版を英語と中国語と韓国語で表記すれば、英国人と中国人と韓国人が観光に来るんですかね。「訪日外客を早急に回復」させられるんですかね。

 私は、その土地の魅力を分かっていただけない限り来ていただけないと思いますし、それ以前に、海外では日本というだけで丸ごと風評被害の対象になっていますよね。サッカーの川島選手の一件で良く分かります。

 風評被害をなんとかしなければ看板なんて無意味です。看板が必要ないとは申しませんが、立派なものでなくて手書き看板だって良いんです。その方が一生懸命な感じがしますよね。

 政府の方は、看板の架け替えという、業者に発注すれば済むだけの、一番簡単に出来ることをやって、それで復興している気になっておいでなんでしょうか。そういう方の心中を、怪しみたくなるのは私だけではないと思います。 

 末法の国ですな、ニッポン。

追伸①

 藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に登場させていただきました。
 不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。

 他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。

 是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
 ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)

追伸②

  「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

 この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

 その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

 現在の笑顔数は300人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

 皆様も、是非御参加下さい!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて964日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 

Filed under: ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)