第3回⑧
国際観光日本レストラン協会の「第3回青年後継者の集い」が開催され、不肖の私がセミナー講師を務めさせていただきました。
「適サシ肉」の話しを聞きたいということでしたので、以下のような内容になりました。長いので、4/21から8回に分けて公開しています。さて、
<以下本文>
そしてついにA5等級を止めて、「適サシ肉宣言」をするにつき、店のスタッフが支持してくれたことは支えになりました。
実は2016年10月より12月中旬まで「全社員一対一肉の話し面談」を行いました。パートさんに至るまで全員に今後「ちんや」の肉の仕入れ方針をどうするのか、牛の性別・月齢と脂の融点の件、熟成期間とアミノ酸の増加率の件、肉の加熱方法と和牛香の件など・・・完全に分かるまで、紙を一切使わずに説明し、耳から聞いて分かるように努めました。
およそ1時間半かけて説明するので、一日一人しかできず、師走になってようやく終わりました。この過程で全員の認識が統一できたことで、すべての環境が整いました。
結局、宣言を敢行したのは、2017年1月15日でした。そして大拡散したのは、2月8日。その後の成り行きは、先ほどお話しした通りです。
この顛末を経験して、私はある想いを強くしました。
「単純化と数値化は嫌いだ」「二元論は嫌いだ」という想いです。
「霜降VS適サシ」「改革派VS守旧派」というテレビの「二元論仕立て、対立仕立て」の手法は、本当にウンザリです。そして、なぜ牛の業界は「A5等級イ―コール高級」という、あまりに単純なメッセージを平押しに押して来てしまったのか、ここが本当に疑問です。
今、家畜改良技術研究所が策定しようとしている「肉のおいしさ総合指標」では数十にも及ぶ物質が肉の美味しさに寄与していると想定しています。美味しさは複雑なんです。
それなのに、各県の畜産試験場の行政評価の尺度は「A5等級の出現率」です。単純過ぎます。本来畜産試験場は美味しい肉を造るのが使命なのに、「A5等級の出現率」を上げることが自己目的化してしまったのです。本末転倒の一語です。
皆さんも会社を経営しておいでですが、単純な数値目標を設定して、それを追いかけることの弊害に、さし出がましいですが、ご留意いただけたらと思います。
このように美味しさは複雑です。だから単純化に馴染みません。しかし「複雑です!」と叫んでいては、お客様から「わからないよ!」とそっぽを向かれます。どこかで妥協して、複雑と単純の間をとらないといけません。
味の世界が結局は「塩梅」であるのと同様に、お客様とのコミュニケーションも、また塩梅だ、今回の顛末で私が経験したのは、まさにこの点でした。本日は、それを発表する時間をいただけましたので、一つの体験談として紹介させていただきました。
そして、ついでにもう一つだけ申し上げますと・・・
<続きは明日の弊ブログで>
追伸
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
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978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.616日連続更新を達成しました。