皇族方の好き嫌い
皇族方から、すき焼きが好きだという話しを聞くことはほとんどありません。
すき焼き以前に、原則として皇族方は個別の料理について良いとも悪いとも、美味かったともまずかったとも言わぬように努めておいでのようです。
日頃の食生活は、質素に、腹八分目に、そして「一物全体(いちぶつぜんたい)」と言って、食材を捨てずに使い切るように努めておいでだとか。
昭和天皇の御代、納豆が用意されましたが、当時の大膳課の職員が、陛下に納豆の糸を引かせるわけにはいかないと考えて、塩揉みして水洗い⇒完全にぬめりを取り去った納豆(?)をお出ししたそうです。
しかし、こんなに細工をしては風味もなにも無くなってしまいます。陛下は「もう納豆は食べたくない」とこぼされたそうですが、これは陛下が食事に文句を言ったとても珍しいケースです。
昭和天皇は鰻がお好きだったようですが、自分から食べたいとおっしゃることは決してなかったと聞いています。
そんな中、桂宮宜仁親王さま(1948年~ 2014年)は、すき焼きがお好きだったようです。
生前には存じませんでした。
先日、ご逝去一年の機会に親友だった言う方がテレビに出て、「秘話」を語っておいででしたが、その中にすき焼きが出て来ました。
桂宮さまの親友だというのは馬場敬之輔さんという方で、
「2人で、キッチンですき焼きを作ったんです。卵を鍋の中に入れて固まってしまいました」
・・・と語ったそうです。
これで思い出したのですが、桂宮さまのお父上・三笠宮さま
(崇仁親王さま)は、「ちんや」に見えたことがありました。
当時の内山栄一・台東区長の招待で見えました。
すき焼きなどと申すものは、そもそも下町の食べ物で、皇族方が見えるなどということは、あまりなく、座蒲団や畳を直したり、また食中毒を決して出せませんでので、保健所との打ち合わせが大変だったようです。私が子供の頃の話しです。
料理屋サイドとしては、好き・嫌いを言っていただきたい気もしますが、それを利用する不敬な輩が出て来ないとも限らないので、この原則は時代が変わっても、守られるのでしょう。
今回は珍しいエピソードが聞けました。
追伸
すき焼き思い出ストーリーの投稿を募集しています。
すき焼きは文明開化の昔から、日本人の思い出の中に生きてきた料理です。でも残念ながら、その思い出話しをまとめて保存したことはなかったように思います。
ご投稿くださったものは、「ちんや」創業135周年を記念して本に纏め、今後店の歴史の資料として、すき焼き文化の資料として、末永く保存させていただきます。
どうぞ、世界に一つだけの、すき焼きストーリーを是非、私に教えて下さい。
既にご応募いただいた、50本のストーリーはこちらです。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.933日連続更新を達成しました。