肉汁がスゴーい♡♡♡

肉汁がスゴーい♡♡♡

とテレビで女子アナが絶叫しているのを頻繁に目にしませんか。

「安くて、うまい(?)」メンチカツのレポートです。

しかしですね、肉汁をスゴくするのは、とっても簡単ですよ。

挽き肉の中に脂を混ぜ込めば良いだけですから。

牛脂に含まれる何種類かの脂肪酸の中で、モタれると悪名高い「ステアリン酸」(分子式C17H35COOH)の融点 は69.9 °Cですから常温では固形ですが、揚げれば当然融(と)けますね。しかし、その周りは衣で覆われているのですから、融けたステアリン酸すなわち肉汁は外へ出られません。

だからナイフで切れば、それが飛び出して来て、「スゴーい♡♡♡」状態になるに決まっています。

しかし!その肉汁も冷めてきて品温が融点の69.9 °Cを下回ると、液状だったものが固形に戻って行きますから、ヒトはそれを消化するのに四苦八苦しなければなりません。

その状態を「モタレる」と申します。

なんで、そのようなものを喜ばないといけないのでしょう。私には、原価の安いものを好き好んでいる、お目出度い人にしか見えませんな。不思議です。

対するに「肉汁がスゴくない」メンチカツもあります。

「メンチカツの会」のメンチカツです。

「メンチカツの会」とは根岸の老舗洋食店「香味屋」のマダムK恵さんの誕生日を祝って毎年5月末に開催される会ですが、メインの料理がメンチカツなのです。

そしてそして、この会に招かれた客は、好きなだけ=わんこ蕎麦のようにメンチカツを食べられるのです。

わんこ蕎麦のようにメンチカツを食べるなんて、想像するだけで胃がモタレてきたなどという勿れ。

食べられるのです。

現に私は今回7個食べました。同じ机にいた鰻屋のIW本さんは9個食べました。

そしてモタレませんでした。

脂のこと以外に肉の熟成のこともあろうかと思いますが、あまり長い文になってもいけないので、その話しはさて置きまして、とにかく「香味屋」さんの肉はモタレません。

味付けも優しいお味。

今年80歳の私の父(=「ちんや」五代目)も、日頃「香味屋」さんの洋食を愛食しています。

「肉汁がスゴーい♡♡♡」みたいな流行り言葉に動かされないところに、私はいつも感心しています。

9個食べてもモタレないメンチカツを、ご馳走様でした、K恵さん。

追伸

すき焼き思い出ストーリーの投稿を募集しています。

すき焼きは文明開化の昔から、日本人の思い出の中に生きてきた料理です。でも残念ながら、その思い出話しをまとめて保存したことはなかったように思います。

ご投稿くださったものは、「ちんや」創業135周年を記念して本に纏め、今後店の歴史の資料として、すき焼き文化の資料として、末永く保存させていただきます。

どうぞ、世界に一つだけの、すき焼きストーリーを是非、私に教えて下さい。

既にご応募いただいた、50本のストーリーはこちらです。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.926日連続更新を達成しました。

 

 

Filed under: 色んな食べ物,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)