サイコ―!
3月に入り下仁田葱のシーズンが終わり、「ちんや」の「変わりザク」も新筍に切り替わる予定です。ですので、下仁田葱の取り扱いは今年はまもなく終わり、ということになりました。
生産者の小金澤ファームさんに、そのことを伝えますと丁寧にも返信が来ました。
「下仁田葱の名前は知っていても食べたことがない、という人が結構いますので、『ちんや』様で取り扱っていただいたことで、知ってもらえた(食してもらえた)人が確実に増えたことが生産者としてとても幸せに感じます。」(中略)
「冬限定の扱いにくい「下仁田葱」を取り扱っていただき、たいへんうれしく感謝しております。」
そう、すき焼き屋にとって、下仁田葱は扱いにくいのです。
葱はすき焼きには必要不可欠
⇒とにかく一年中絶対に欠品しては困る
⇒冬しか出ない下仁田は扱いにくい
という図式は崩せませんから、下仁田の生産者の方が従来の葱とシェアを争う、という発想で営業なさると、それは徒労に終わると思います。
それが「名前は知っていても食べたことがない」現実に繋がっている模様です。
ですので、ここで「食べ比べこそ食の楽しみ」ということに、すき焼き屋が気づくことが大事と思います。
食べ比べには不都合もあります。
食べ比べをさせれば、お客様が「従来の葱が最高ではなかったのかも!」ということに気づいてしまい、困ります。
しかし、お客様自身が、これだけ情報を持つようになった現在では、すき焼き屋が薦める葱だけを、お客様は黙って無批判に受け入れはしないでしょう。食べ比べをしてみたいのです。
だいたいですよ、「最高」って、何か一つに決める必要があるんですかね?
ほにゃらら牛がサイコー!とか、
なんちゃってサバがサイコ―!とか。
弊ブログを読み続けている方は、私がそういうことを全く言わないことにお気づきと思います。「ちんや」の肉がサイコー!とすら私は言いません。
色んな食べ物があって、良さがそれぞれあるのであって、それを食べる側の人の味覚もまたそれぞれ、です。
だから「サイコ―!」と言わないのです。
食べ方だって色々試して良いのです。
以前「ちんや」の精肉売店のスタッフは、お客様から、
この肉はどうやって食べるのが美味しいの?と聞かれると、
塩・胡椒だけして、牛脂を使って炒めて下さい。それが「サイコ―です!」
と答えていました。
尊大でした。そして阿呆とすら言えます。
だから「塩・胡椒だけでサイコ―!」は止めさせました。今は色んな調味料を販売して、色んな食べ方を試していただいています。
さらに申しますと、「サイコー!」を止めると売り手として、とても気が楽です。
最高と断定できるか判然としないもとを「サイコー!」と言い張る時の後ろめたさったら比類のないものです。
それでも力んで言い張れば、阿呆に見えましょう。
テレビやネットがランキングを好むのを視て、私はますますランキングが嫌いになり、止めた次第なのですが、止めて実にハッピーです。気楽です。
読者の皆さんにも、お勧めしたいですね。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.470日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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