ぷくぷく、お肉

『ぷくぷく、お肉』という本を読みました。

この御本は随筆集で、色んな作家さんが書いた、32篇の「肉」にまつわる随筆が集められています。

すき焼き、ステーキ、焼き肉、とんかつ、焼き鳥・・・

「古今の作家たちが「肉」について筆をふるう随筆アンソロジー」という触れ込みです。

なんでも「おいしい文藝」第1弾だとかで、出版社はこれをシリーズ化したいようです。

勿論すき焼きの話しだけではないのですが、冒頭はすき焼き。

阿川佐和子「スキヤキスキスキ」

開高健「エラクなりたかったら独身だ、スキヤキだ」

古川緑波「牛鍋からすき焼きへ」

山田太一「すき焼きの記憶」

村上春樹「すき焼きが好き」

すき焼き以外では、

赤瀬川原平「ビフテキ委員会」

馳星周「世界一のステーキ」

向田邦子「味噌カツ」

檀一雄「ビーフ・シチュー!」

・・・といった顔ぶれです。

さて山田太一さんの小説『異人たちとの夏』の、重要な場面設定が「雷門のすき焼き屋」であることは比較的有名かと思います。

今回の本の中で太一先生は、その場面設定が是非そうであらねばならないかった理由について書いておられます。幼少期の御本人の体験がそうさせたのです。

主人公は夏に幽霊と会うというのに、それでも「雷門のすき焼き屋」なのです。

「雷門のすき焼き屋」としては在り難い限りですね。

一方、読んで実に面白く勉強になったのは、古川緑波の「牛鍋からすき焼きへ」。

明治末期の、すき焼きがまだ牛鍋と言われていた頃から、緑波は色々な牛鍋屋を食べ歩いていて、どの店がいつ頃どんな食べ方だったかをハッキリと記憶しています。

頻繁に来てくれたわけではないようですが、「ちんや」も出て来ます。

実に色々な店が在ったようです。

四谷の「三河屋」=肉に割り下が最初からかけてあった。卵は無し。

新橋の「うつぼ」=肉がブツ切り、味噌煮込み。

両方とも今は無い店ですが、生気と猥雑感が溢れる、往時の牛鍋屋の雰囲気が分かって、実に面白い1篇でした。

追伸、

2/24にインターネットラジオ局CROSSWAVE☆SENJUの番組「ビジネスチャンネル~この人に聞きたい」に出演させていただきました。

過去の放送は、こちらのURLで聞けますので、よろしかったら、是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.461日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)