いろは
瀬戸内寂聴先生が東京新聞に、大正時代の文学界をテーマにした連載をされています。
先日、その内の一回で、木村荘太が伊藤野枝に「熱烈な恋文攻勢」をかけた、という話しが書いてありました。
木村荘太とは、この時代の作家・翻訳家で、武者小路実篤の「新しき村」に参加した一人でもありますが、この作家のことをご存じない方は多いと思います。
私だって、すき焼き屋でなければ記憶していなかったと思います。木村荘太の父が、すき焼き屋だから記憶しているのです。
実は、木村荘太の父は「すき焼き屋だ」どころではなく、すき焼き業界史上最大の、話題の男なのです。
荘太の父・荘平は牛鍋屋チェーン店「いろは」を20数箇所に展開して、「いろは大王」と呼ばれると共に、葬儀会社「博善社」の社長も兼ねた実業家でした。
多数の愛人を持ち、その愛人に「いろは」各店を経営させていたそうです。
スゴいですよね。伝記本も出ています。
あちこちに作った子の数が、男13人に女17人、というから驚きです。荘太も妾腹の子の一人でした。
荘太の他にも才能ある子が多く、また裕福だったためか、多くが文学方面に進んでいて、異母姉栄子が木村曙の筆名で作家として知られた他、同母弟に木村荘八(挿絵画家)、異母弟に木村荘十(直木賞作家)と木村荘十二(映画監督)がいました。八、十、十二とか名前の付け方がいい加減なのが素晴らしいです。
荘平は、今の人権感覚ではトンデモナイ男でしょうが、この時代の、肉食な勢いを感じますね。
そして、その「大王」荘平の子である荘太が、時代の先を行く女性・野枝に恋をしたわけですから不思議です。
ややこしいですね、大正時代。
追伸
毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行。是非お求め下さい。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて697日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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