山ふぐ

 11月に前橋市で開催した「すきや連」でお世話になった「群馬やまふぐ本舗」さんから、蒟蒻とシラタキが届きました。

 「やまふぐ」の御主人の御自慢は、その蒟蒻・シラタキが刺身として食べられることです。下茹でしなくてOKで、そのまま食べられるのです。

 それどころか「下茹で厳禁」(!)と書いてあります。茹でて固くしてもらったら迷惑!ということです。へえーですよね。

 そういうことが出来るのは、石灰が少ないからです。

 そもそも石灰は、アルカリ反応を起こしてコンニャク粉を凝固させるのに使います。作るコンニャクに対し、必要量を完全に反応させれば、最小限で済むわけですが、その加減は、御主人曰く・・

「その辺りの添加基準は、データと数値で表すより、今までの経験と感覚でその都度加減しないと、四季折々の製造環境の違いにより、均一に作る事は難しいんです。」

 ところが、一般的な製造者さんは・・・

「食品に一番あってはならない「腐敗の原因」を取り除く事が第一と考え、必要以上のアルカリ分を加え作るんですが、その加減の限度を知らず、数値ばかりを見てしまうのだと思います。」

「しかし!最低限必要とされる凝固剤を完璧に混ぜ合わせれば、意外と日持ちするんですよ!パックしてボイルすればなおさら。」

ということで、「やまふぐ」さんの蒟蒻は、意外なことに消費期限が長いのです。

「みんな「製品が傷むのを避けるため!」って云うか、加減の限界を知らないし、また挑戦してないため、無駄な石灰添加の悪循環に陥ってるのかも知れませんね!」

「要は、一般的な製品はいろんな部分で無駄が多いんです。物事には「適量」て云うのがあり、コンニャクもそうなんですよ。」

 この話しには、なるほどと思いました。

 今時はどうしても過剰に「安全」に、食品を作ろうとする傾向があるように思います。結果、「安全」でも「加減」が悪くて⇒不味い場合が多いような気がします。

 実は私はワインを大量に飲むことをしませんが、それはワインの参加防止剤(=亜硫酸塩)が好きでないからです。日本酒のように火入れをしないワインは、これを入れないともたないのですが、その量が多いものが結構あるようです。

 それが苦手なのです。

 このクスリの量が多すぎないか、厚生省も通関の段階で、規制しているそうでが、その基準は結構緩く、皆パスしてしまうそうです。

 私がワインを好きになれないのは、この人達のせいです。

 「安全」が大事でないと言うつもりはありませんが、過剰な安全は考え物ですね。その証拠に、蒟蒻に石灰を多く含ませたからといって、消費期限がそれだけ伸びるわけでもありません。

 で、結局「やまふぐ」さんのシラタキの御味はどうだったのかっていうことですが、

 フレッシュ感が素晴らしかったです。御高説の通り、臭みは完全に無しです。夏場に酸味を効かせて食べたら爽快でしょう。

 こういう食べ方をして初めて、「山ふぐ」と言われる理由が分かります。

 すき焼きに入れてしまうと、どうしても少し固くはなりますので、「山ふぐ」感はかなり薄まります。でも弾力はしっかり残っていて、食感が楽しいです。七味とか辛みを加えるとさらに良いかもしれません。

 同じシラタキでも、いろいろな食べ方ができるのだなあ、と感心しました。

  追伸

  毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行予定とか。是非お求め下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて680日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「すき焼き思い出ストーリー」のサイトは、こちらです。

 Twitterもやってます。こちらでつぶやいています。

 

 

Filed under: すき焼きフル・トーク,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (2)