組み合わせ

 弊店の肉と、他の食材の組み合わせをテストしていて、

 うーん、そうかあ、ダメかあ、と思うことがあります。

 高品質の肉と、高品質の他の食材を組み合わせれば、必ず最高の組み合わせになるとは限らない⇒ダメかあ、ということです。

 先日も、弊店の肉といくつかのバターの組み合わせをテストしていた所、素晴らしい品質と特徴をもった、あるバターとの組み合わせがNGでした。バターの個性が強すぎるのです。

 ここで思い出しますのは、漫画『美味しんぼ』の「ハンバーガーの要素」という回です。

 この回では、食の巨匠・海原雄山の弟子の板前さんが、雄山の店を辞めてハンバーガー店を始め、最高の素材ばかりを集めたハンバーガーを売ろうとします。しかし、その最高のはずのハンバーガーは、雄山に散々に酷評されてしまいます。

 その板前さんは、「自信作のハンバーガーが、まずいはずが無い。雄山先生は自分が辞めたことに腹を立てて、そんな風に言ったのだ」と思い、今度は雄山の子の山岡士郎に、試食を依頼します。

 ところが、雄山と対立している士郎も、そのハンバーガーを貶すので、板前さんはひどく落胆します。そして最高のものばかりを組み合わせても、打ち消し合うことがある、という士郎の解説に、自分の不明を思い知らされる、そういう筋です。

 これに類することが本当にあります。

 肉と何かを合わせて料理する時、最高品質のものより一般的な品質のものの方が旨い、ということが実際にありますね。

 実は、この話しは弊社の系列のカジュアル・レストラン「ちんや亭」で、お出ししている料理を考える時に、知っていただいておくと良い話しです。

 大きい声では言いにくいのですが、ごくフツーのチーズを使っていたりするのです。

 「ちんや」の座敷=つまり、すき焼き部門の面々は、「ちんや亭」の、こうした流儀を、かつて「鎮定文化」イヤ「ちん亭文化」と称していました。勿論、バカにしたニュアンスです。

 でも、今私はここを考え直そうかと思っています。

 高級なのとフツーなのをテストして、フツーの方が旨ければ、堂々とフツーを採用すれば良い、と今は思います。

 だから、最近色々テストしているのですが、その結果、「このままで、いいんじゃあないの!」ということがあります。

 久しぶりに御来店いただいて、全然変わっていなくても、何も研究してないわけじゃあ、ないんです。

 そのヘン、ひとつ、ヨロシク!!

 あ、でも、安いものを買えば良いのか、というと、それは勿論、違います。

 かつては安くてもマトモな製法で出来ている食材が沢山ありましたが、今時はそうは行きません。

 現代の安い食品の場合は、製法そのものが変わってしまっている場合が多いです。「変わってしまう」とは当然製造工程を省く方向に変わっています。

 だから、安いものを買えば良いのか、というと、それは違うのです。

 まあ、でも、その話しを始めると、長いですから、今日はこの辺で。

追伸

  毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行。是非お求め下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて686日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)