特産松阪牛
ロート製薬さんが発行する『太陽笑顔fufufu』という雑誌の「スマイルトラベル東京浅草編」というコーナーに弊店が採り上げられることになり、昨日取材の方が見えました。
皆さん、目薬もパンシロンもメンソレータムもロートですよ! さて、
弊店のお客様でもある、東京農業大学研究員の松本栄文先生が、
『SUKIYAKI〜すき焼き』という新刊本を出されました。
先生は日頃から全国の農家を歩いて食の研究をしておいでですが、ある時、松阪牛の肥育農家・森本武治さんが牛をかわいがる姿を見て「これほど肉牛を大切にしている農家は見たことがない」と感動、その後4年間にわたって取材を続けたそうです。その成果が、この御本です。
森本さんが手塩にかけて「てるよし」(=メス牛の名前)を育てる様子が写真をふんだんに使って紹介されています。
総カラーページのハードカバー本で、読み物というよりは、写真集のようです。
大きい写真というのは良いもので、登場する牛の関係者達の表情に、肉への情熱が滲み出ています。
また牛が老舗すき焼き店に競り落とされて料理となるまでを描くところも、「すきや連」に参加して下さる、「牛銀本店」さんが協力していて、見応えのあるものになっています。
先生は「松阪牛がいかに多くの人から愛情を注がれ、大切に育てられたかを伝えたい。」「世界に誇る食遺産「特産松阪牛」の魅力を、もっと私たちは知るべきだと思う」と書いておられましたが、この御本からはそれが直観的に感じられます。
美味しいものはなぜ美味しいのか、が分かる一冊と思います。
この御本にはイメージ写真ばかりでなく、「御勉強」部分もあります。
松本先生は、本来食品科学が御専門なのです。
「御勉強」部分の内、「松阪牛」の定義に関する部分は、弊ブログの読者の皆さんにも、おさえていただいた方が良いと思いますので、ここでも書いておきます。
さて、2002年以前の「松阪牛」の定義と現在の「松阪牛」の定義は違います。
現在は、松阪地区22市町村で育ち、松阪食肉公社独自の個体識別システムに参加している牛は、等級が低くても、仔牛の産地がどこでも「松阪牛」と呼べます。
このシステムは、国の個体識別システムより厳重なもので、不正が絶対に行えないようになっている、素晴らしいものでして、その牛が松阪の牛であることをしっかり証明してくれますが、等級を保証するものではありません。そこが02年以前の「松阪牛」の定義と違うところです。
現在、仔牛の産地が但馬・淡路で、なおかつ900日以上肥育された牛、つまり02年以前に「松阪牛」と呼ばれていた牛に近い牛を求めたければ、「特産松阪牛」を求めないといけません。
「特産松阪牛」は「松阪牛」全体の1割程度です。仔牛のメイン産地が宮崎県などの南方に移った結果、「特産」のシェアは小さいものになっています。それが実情です。
覚えておけばカノジョに自慢できますよ、「特産松阪牛」。
自慢した結果「御馳走してえ〜」と請求されても関知しませんけどね、私は。
なお『SUKIYAKI〜すき焼き』の発行元は、㈱カザン。
ISBN978-4-87689-605-9 C0072 です。
追伸
毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行予定とか。是非お求め下さい。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて657日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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