あさ開

 「武士の商法」とか「殿様商売」とか言うと、悪い意味で使いますね、普通は。でも繁盛している会社もあります。

 弊店が最近御酒を仕入れさせていただいている、岩手県盛岡市の蔵元「あさ開(アサビラキ)」さんがそうです。南部藩士だった村井源三という人が明治4年(1871年)に武士を辞め、酒造りを始めたのが、この蔵の起源だそうで、侍から商人としての再出発と、明治という新しい時代の幕開けにかけて、「あさ開」と命名したとか。

 その後、現在のこの蔵は、全国新酒鑑評会で連続20回入賞、その内16回は金賞を受賞しています。スゴいことです。どんな作り方をしているか、気になりますね。盛岡は母の故郷でもありますし、先日火曜日の定休日を利用して見学させていただきました。

 さて、新青森行きの東北新幹線「はやて」号に乗りますと、速いですねえ。2時間20分で盛岡へ着。子供の頃夏休みに盛岡へ旅行した時は、6時間かかっていましたが、今では日帰りは可能です。

 着きますと、あいにく御主人様は東京出張とかでお留守でした。こちらは火曜日しか遠出できないので、それは仕方がないことです。

 でも、その代わり「現代の名工」に選出されている、杜氏の藤尾さんが案内して下さいました。この御方は、「南部杜氏の至宝」と言われる方でして、恐れ多いことです。

 敷地内にある、御酒の神様に拝礼した後、工場へ入れていただきますと、

 近代的!

 この工場は、昭和63年に竣工した工場だとかで、ほとんど全ての工程をコンピュター制御できるようになっています。発酵タンクの温度が高すぎれば冷水を回し、低すぎればヒーターが付いて、温度を適切に維持します。

 全国新酒鑑評会は減点主義の傾向があるそうですので、こうした完璧な造りが高く評価されるのかもしれません。

 その近代的な酒蔵を、今年試練が襲いました。大震災による停電です。

 不幸中の幸いで、大震災は3月はじめの寒い時期で、もともと酒造りにちょうど良い季節でした。それで今回は電源を失っても、望ましい温度からわずかにズレただけで済んだそうですが、電気が来るまでの間、生きた心地がしなかったと「現代の名工」は話しておられました。

 機械化しても、そういうことがありますから、やはり最後にモノを言うのは、人間力ですね。

 で、御約束の、試飲。

 普通試飲した酒は吐き出して、酔わないようにして、試飲を進めて行きますが、この日は火曜日ですので、構うことはありません。搾りたての、加水も火入れもしていない酒、つまり蔵現地でしか飲めないお酒をいただきました。

 うまいです、当然ですが。

 しっかり頂戴しまして、すっかり気持ち良くなった頃には日も傾いてきました。次の訪問先=岩手県酒造組合さんの事務所に立ち寄って、帰路につきました。

追伸

 今日は私の誕生日ではありますが、皆さん、コメントには極力心を込めず、そっけなく、事務的にお願いします。

 一応おめでとう。

 とりあえずおめでとう。

などとお願い・・・します。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて640日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (2)