マナー

 仮定の質問ですが・・・

 あなたの御親戚に御不孝があって、それから1年がたち、喪主さんから一周忌の法要によばれたとします。墓参→法要の後には、高級料亭での食事が付いている模様です。

⇒それで「ほお、高級な店だ、楽しみだな」と思っていたところ、当日朝起きてみると、どしゃぶりの雨です。さて、あなたは次の靴の内どちらを履いて行きますか?

①一張羅の、5万円も支払った革靴

② ビニール製の、非常にダサいが防水加工の長靴

 さあ、考えてみましょう。

 料理屋的には②です。是非②を履いて下さい。

 理由は、申すまでもないですが、店内を汚さなくて済むからです。

 高級な革靴は、ある程度水をはじきますが、それでもどしゃぶりの雨の中、墓地を歩けば、ズブズブに成りますね。靴の中の靴下まで浸水しますから、その靴下で料亭へ上がれば、結構な廊下や畳に足跡を印してしまいます。

 墓参用の靴下とは別に、もう一足靴下を用意しておいて→店内で履く、という手もありですが、どしゃぶりの場合は、たいていスーツの裾まで汚れますから、座敷に座った時に、やはり汚してしまいます。

 堂々と、ビニール製の長靴をお履き下さい。

・・・なんてことを言うと、老舗はマナーにうるさくてウザいなあ、とか言われたりしそうです。それで、店の側も、だんだん客にマナー上のリクエストを言わなくなりました。それで、ますますマナーをご存じない方が増えているようです。

 たしかに「マナー」「マナー」と言うと、楽しくないかもしれません。言う方も、言われる方も。

 そこで御提案ですが、それも含めて「食文化」と考えてみては、どうでしょう。

 例えば、クラシックのコンサートは客が静粛にし、演奏中は入場しないことが文化の一部です。歌舞伎では客が逆に、盛大に掛け声をかけるのが文化の一部です。

 だから美しくセットされた飲食店に入る時は、足跡を作らないようにするのが、客の為す文化と言えると思います。

 だいたいですが、文化とか申すものは、客が代金をしっかり支払い、かつ適切な態度で鑑賞しないと滅びます。

 靴などの革製品も文化ですので、普段はそちらにもご高配を賜りたいですが、どしゃぶりとなれば、ビニール靴ですね。

 「マナー」「マナー」と言われると、なんか、腹立たしくて守りたくなくなるかもしれませんが、「文化」と思ってみたらどうでしょう。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて641日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)