納豆と市川海老蔵

 昨日5/10のブログに、ちんやの肉の仕入れ方針について書きましたが、その中に書いてある、「熟成をすると、なぜ肉が旨くなるのか」、が良くわからない、というメールが、「浅草うまいもの会」の、K子会長から届きました。

 そこで熟成すると肉がなぜ旨くなるかの説明ですが、

「熟成すると、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わります。」

「1ヶ月置いておく間に乾燥が進み、相対的に水分が減って、旨味成分が濃縮されます。」

「牛を解体しないで、丸ごと熟成させた方が、乾燥が進むので、解体してパッキングしてから熟成させるより、旨いです。」

 以上がその説明ですが、このご説明でご理解いただけない場合も多いです。先日、雑誌のご取材があって、熟成と肉の旨さについてご質問があったので、上記のようにお答えした時も、そういえば、取材嬢は「?」という感じでした。

  旨さについては、熟成がポイントなのですが、そこがわかりにくいと思う方が多いようです。どうもバケ学用語を口頭で言うと、文系人にはトッツキにくいかもしれません。「そんなことより産地はどこなんですか?」と文系的なことを聞かれると、産地にあまりこだわっていない我々としては、チョッとがっがりしてしまいます。

  そこで! 熟成について、わかりやすく説明する作戦を最近考えついたので、今回のご取材で使ってみました。それは、「熟成させたお肉と、そうでないお肉は、納豆と、生の大豆の違い位の違いがあります。」と例える作戦です。これはわかりやすいようです。

 化学的にも、納豆菌という細菌の作用でタンパク質がアミノ酸に変わるのと、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わるのは、似ていると言えなくもありません。かなりザックリ、ですが。

 以前、「銀座4丁目スエヒロ」のU社長が紹介して下さった、熊本県畜産試験場の先生も、「熟成した肉は、生鮮食品ではなく醗酵食品とみなします。」と言っておいででしたので、あながちハズレた例えでもないでしょう。「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」、少し誇張した例えですが、わかりやすいので、まあご勘弁いただいて、使おうと思っています。

 「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」 ついでに、もう一つ例えると、「住吉史彦と市川海老蔵」

 おっと、間違えた。最後の例は、完全に同等のケースだった、ですよねえ? 理系の皆さん。 

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。