最凶の質問者はお子さんです。
メデイアの方の質問内容はたいてい見当がつきますから答えられないことはまずないですし、質問が愚問の場合は、そう言ってやることもできます。が、お子さんの場合は愚問だとか言えませんし、実際愚問のことはないです。鋭すぎて絶句することがある位です。
そういう質問をお子さんにされるのは見学・体験プログラムの時です。
弊店は、肉の作業場を見学したり、肉のカット体験をしたりすることができまして、台東区が見学受け入れ施設のマップを公開しているので、そこに載せてもらっています。そのマップを社会科見学希望のお子さんが見つけて、申し込んで来るのです。
あくまで見学・体験プログラムであって、質問コーナーではないのですけど、多くの場合質問させて欲しいというリクエストがあります。レポートを書く場合の「お約束」なんでしょうか。
では、昨日の回答の続きです。
・獣医から、すき焼き屋にした理由は何ですか。
「獣医」と言いましても、ペット全般を診る獣医ではなく狆専門でした。現代風に申せば「ちんや」は「狆のブリーダー」というのが一番近い表現でして、ブリーディングに当たって獣医が持つような知識も持っていたので、自分が販売した狆が、その後容体が悪くなれば診ることもしたということです。全然御縁のないペットを診たわけではないです。
で、その狆をやめた理由ですが、明治時代になって、犬の趣味が変わり、狆が売れなくなったからです。優秀な血統の狆は大変な高級品で、しかも可愛らしい犬種なので、軟弱イメージだったのです。激動の幕末・維新の時代にそぐわないと思われたので売れなくなり、商売を変える必要が生じたわけです。
・すき焼きにこだわっている所は何ですか。
まず割り下の味つけです。関東では一番甘い部類だと思います。味付けは良い・悪いの話しではなく、歴代のお客様が馴染んでおいでなので、変えるわけに行きません。その味を目指して食べに来られるわけですから。
肉は、その味つけに合わせて仕入れます。肉に合わせて割り下の味を変えるわけではないです。割り下が甘辛いので、肉に旨味が多く、脂が良く溶けないといけません。肉の旨味とはアミノ酸であり、良く溶ける脂とは不飽和脂肪酸です。アミノ酸を増やすために肉を熟成させ、不飽和脂肪酸が増えるような育て方をした牛を選びます。
・昔から変わっていないことはありますか。
場所がここだということ。それから割り下の味、それ位ですね、具体的には。
・仕事のやりがいは何ですか。
お客様が繰り返し来て下さること。それもご家族揃って繰り返し来て下さることですね。
お子さんが大きくなられて結婚され、そのお子さんまで来て下さると嬉しいですね。逆に、永年来て下さった方の法事の会食で使っていただけるのも、とても在り難いことです。
・特に気をつけていることは何ですか。
「特に何を」というものはないですね。繰り返し来て下さる方が違和感を感じないように気をつけています。
・良い肉の見分け方を教えて下さい。
まず赤身の色です。小豆色がうまいです。黒毛和牛を長期肥育し、また肉にしてから熟成させた場合、肉の色は小豆色になり、鮮やかなピンクや金赤にはなりません。
次に湿感を観ます。しっとりと乾いているのがベストです。湿気が多い場合は熟成が足りないと思われます。熟成が足りないと旨み=アミノ酸が少なく、濃い味付けの割り下とバランスしません。
次に、肉をしばらく常温に置いて、脂の融け具合を観ます。脂が融けて光を反射するようなら、その脂は不飽和脂肪酸が多くてモタレない脂ですが、いつまでもカチカチのままでしたら、モタレる脂だと思います。(終わり)
追伸、
<台風19号接近にともなう、「ちんや」営業時間の変更について>
誠に勝手ながら営業時間を以下のように変更させていただきます。ご諒承賜りたく、お願い申し上げます。
・10月12日(土曜)
「ちんや」全部門で終日休業させていただきます。
・10月13日(日曜)
お座敷・個室:16時30分に開店し、21時30分まで営業致します。
精肉売店:15時に開店し、19時30分まで営業致します。
肉の食べくらべレストラン「ちんや亭」:休業させていただきます。
本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.515本目の投稿でした。