肉業界の恩人

今月の「三田評論」に、日本の肉業界の恩人とも言うべき人の評伝が載っていました。
それは米国人医師デュアン・B・シモンズ。
安政6年(1859年)に来日して以来、明治22年(1889年)日本で客死するまで日本の医療界に貢献した人です。
シモンズは福澤諭吉の恩人でもあります。
福澤先生は明治3年に発疹チフスにかかり、18日間意識不明という重体に陥ります。その時治療に当たったのがシモンズでした。シモンズの指示で薬と栄養を与えられた福澤先生は、ようやく快方に向かいました。「栄養」とだけ「三田評論」には書いてありますが、それは牛肉や牛乳で、それで福澤先生は肉の大切さを痛感します。
この時牛肉や牛乳を提供したのは、設立されたばかり「築地牛馬会社」でした。なんと、築地で牛を飼って、牛肉や牛乳を生産していたのです。
病から回復した福澤先生は、この会社の事業を応援するため、『肉食之説(にくじきのせつ)』という宣伝文を書いて牛馬会社に与えます。曰く、
「我日本国は(中略)肉食を穢たるものの如く言ひなし、妄に之を嫌ふ者多し。畢竟人の天性を知らず人身の窮理を弁へざる無学文盲の空論なり。」
肉が穢れているなんて「無学文盲」だと言うのだから痛快ですが、この文はシモンズの栄養指導の賜物でした。
シモンズが福澤先生の恩人で、日本の肉業界の恩人だと言う所以です。
その後も福澤先生とシモンズは生涯交友を続け、シモンズが亡くなった時の追悼会では福澤先生が弔辞を読んだと伝えられています。亡くなった場所も慶應義塾構内の住居だったとか。
シモンズは現代においては知名度があまりないですから、読み飛ばしてしまいそうな一文ですが、肉に関係ある皆さんは、どうぞ、ご一読を。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.522本目の投稿でした。

Filed under: すき焼きフル・トーク,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
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