「ニッポンチ!」④
小学館の文芸雑誌「qui-la-la」(きらら)で河治和香先生の新連載「ニッポンチ!」が好調です。
和香先生が、「駒形どぜう」の三代目を主人公にした小説『どぜう屋助七』(2013年)にウチのご先祖を登場させて下さって以来、新しい連載が始まるのを楽しみにしておりますが、今回は明治の浮世絵師を主人公にした小説です。登場する絵師の作品がウチにあったりしますので、なおさら楽しみなことです。
登場するのは歌川国芳門下の絵師たち。国芳には歌川芳虎、芳艶、芳藤、落合芳幾、さらには月岡芳年、河鍋暁斎といった弟子がいましたが、国芳が幕府に逆らう位の人だったので、弟子達の性格も皆ユニークで。その人物描写もまた、この小説の面白いポイントだと思います。
連載4回目の11月号の中心になったのは月岡芳年でした。芳年を「ちんや」は持っていないので、これまで調べたことがなかったですが、なるほど波乱万丈の人生だなあと感じました。
芳年は「血みどろ絵の芳年」「無惨絵の芳年」として江戸川乱歩や三島由紀夫などにも愛されましたが、その転機は、上野の彰義隊の戦いだったと書かれています。
芳年は、戦いが終わったばかりの上野の山に写生に出かけ、戦死体や、瀕死の負傷で苦しんでいる兵を描きます。それ以前から火事や喧嘩があると描きとめる為に駆けつけていたそうです。平和な時代には無い生き方ですね。
戦国時代には織部のようなバサラ陶芸が登場しましたが、芳年は幕末明治という戦乱の時代だから登場した絵師と言えましょう。それでいて洋服や洋服を着た人間が大嫌いだったというから面白いです。
こうした生き方はやはり本人の精神に負担をかけ、芳年は幽霊を見るようになってしまいます。それでも描きまくる時期と不調の時期を繰り返して、最後は精神病院に入れられてしまいます。
そういう次第で画風が強すぎるので、店内には架けられませんが、「ちんや」が持っている開化絵の絵師の同時代人には、こういう人がいたと記憶しておくのは必要かもしれません。
続きが楽しみです。
本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.526本目の投稿でした。