最後の3年間
年配の方が、その最晩年にすき焼きを好んで召し上がる、というのは私もよく聞く話しですが、先日阿川佐和子さんのインタビューの中でも、そういう話しが出てきました。
そのインタビューは、佐和子さんが父で作家だった阿川弘之先生の介護生活「最後の3年間」を語ったインタビューでした。
弘之先生は90歳を超えて、自宅で転倒して骨折、誤嚥(ごえん)性肺炎も併発させました。その頃80代半ばだったお母様も、もの忘れが始まって耳も遠くなっていたので、自宅での介護は困難→病院から老人ホームに転院することになりました。
当初老人ホームをいやがっていた弘之先生は、
「意外なほど素直に転院を受け入れ」
「父がその病院を気に入ったのは、職員の対応のよさはもちろん、病院食がたいそうおいしく、お酒も飲め、外出もできると自由な環境だったからです。とはいえ、入院が長期化するにつれ、いくらおいしくても病院食に飽きてくるんですね。例えば、熱々で食べられないとか」
「そこで思いついたのが、週に1度の母との見舞いのときに、鍋料理を作ること。」
で、
「病院の許可をいただき、病室内に電磁調理器を持ち込んで、すき焼きをしたり。“味が濃い“だの“安い肉を食わすな“だの、文句を言いながらも、父はとても喜んでくれました」
「こうして、介護生活は軌道に乗った」
私の知人にも病院食に関わっている人がいますが、最近だいぶ美味しくなってきたと聞きます。
しかし、衛生管理の必要から、調理した後いったん冷凍することが多いようですね。これが「飽きる」「熱々が恋しい」ということに繋がるのだと思います。
そういう場合に、すき焼きはベストですね。
阿川さんの場合、病院の理解があって、本当に恵まれていたと思います。
1周忌だそうですが、ご冥福をお祈り致します。
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株式会社晶文社 刊行
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