文系の壁・理系の壁
アミノ酸とか核酸とか脂肪の融点とかタンパク質分解酵素とか言っていると、
住吉さんって理系の人だったんですね?!
と言われますが、違いますよ。
文系です。しかも最も中途半端な経済学部。私が学生の頃は、今ほど食品科学が重視されていませんでしたからね。
でも今は仕事上必要な知識として、アミノ酸とか核酸とか脂肪の融点とかタンパク質分解酵素とか言っています。
それで先日、雑誌『AERA』の「文系の壁・理系の壁」という特集記事を興味深く読みました。
朝日系の媒体を引用することは昨今どうも憚られますが、この話しはバイアスがかかってない話しなのでお赦しいただくとして、記事に登場していたのは理系の学部を出て、大手化粧品会社のブランド管理をしている女性でした。
植物の病理学を専攻したのに、研究職でなくて企画職として就職、
自己分析が「本来の自分は、事実を見つめる理系脳」という方なので、最初はいつも
「いいものがなんで理解してもらえないだろう」と思っておられたそうです。
それが、やがて仕事をする内
「人間っていうのは多様でいいんだな」って思うようになったそうです。で、今はブランド・マネージャーとして、時代の変化と技術の進歩を合致させることに成功なさっているそうです。結構ですな。
私の場合は、文系→ちょこっと理系→文系+味覚系です。
肉を売る場合にアミノ酸と脂肪酸が重要だとハッキリ認識した直後は、たしかに私も思いましたよ、「いいものがなんで理解してもらえないだろう」って。
でも、お客様は、アミノ酸とか核酸とか脂肪の融点とかタンパク質分解酵素とかを理解して買って下さるわけではないです、当然ながら。
とにかく安いものが良い人もいれば、
流行りを追ってばかりの人もいれば、
肉を食べるより情報を食べているような人もいます。多様です。
そんな中で、今、私は三世代75年間食べ続けていたけば、必ず理解していただける筈だと考えています。
ただし、理解するのは理系脳でなくて舌です。うん、文系を通り越しています。
でも文系脳も使います。
明治維新以来、すき焼きを食べて来た人々の歴史や想いを、いろんな文章や川柳やサイトに仕立てたりする仕事は文系脳がすることですが、そういうものがないと無いと、やはり寂しいものです。
結局、私に言わせていただくとすれば、「文系」「理系」だけでなくて、そういう区分をいい加減止めて、人間の脳をもっと幅広く使って商売する必要があるんじゃないか、そういう気がしています。
追伸
『日本のごちそう すき焼き』は、平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
是非是非お求めください。
弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。
是非。
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