生なり糖すき焼きの会

 「生なり糖すき焼きの会」が、5/24弊店で開かれました。

 「生なり糖」というのは、実は商標です。(株)沖縄さとうきび機能研究所という、ベンチャービジネスの会社が、独自の技術を使って沖縄・粟国島で生産しているお砂糖です。高村善雄さんという方が大手企業の部長職を投げ打って、ライフワークとして興した会社です。

 生産の際、さとうきびの芯の部分だけを、特殊な搾り方で搾り、またフィルターも特殊なものを使って、有用な成分を取り出しているそうです。見た目は和三盆糖のような薄茶色で、コクがあり、そして少し酸味があります。

 機能性が優れていて、まず香味成分のキシロースやグルコースが、肉のアミノ酸と反応したとき、高い香りを出します。また脂に対する抗酸化作用が強くて、さらにミネラルバランスもよいために胃もたれがしないのが特徴です。いいことづくめ、とも言えます。
 今回の会は、高村さんが生産プラントを、やはり沖縄の伊江島に移して、増産体制を築くことになったことから、そのお祝いという趣旨で、高村さんへの出資者や技術的なアドバイザー、友人、そして食い物好きが集まりました。

 私や「すきや連旗振り役」の向笠千恵子先生は、最後の「食い物好き」のカテゴリーで参加しました。

 ただ、今回私は単に愉快に食っているだけ、というわけには行きませんでした。生なり糖を使って、すき焼きの割り下を作らないといけなかったからです。

 普段と同じ割りで作るつもりが、やってみるとダメで、普段よりかなりの程度、糖を増やして作りました。その割りで、普段と同程度の甘味なのです。

 生なり糖には、甘味以外の味を出す成分、特に酸味を感じさせる成分が入っているので、同じ割りでは、甘味が足りない感じがしてしまうようです。含有率としては、2%とか、その程度なのですが、人間の舌の能力は強力で、その位の割合の物質でも、味として感じます。結局普段よりかなりの程度、糖を増やす結果になりました。

  この割り下だけをなめると、結構な酸味を感じます。(そのかわり醤油っぽいツンツン感は普段より小さいです。)

 ただ肉を入れて加熱して食べると、普段と大きく違う感じがしないのが不思議です。加熱中に、成分が熱で壊れたからか、肉の成分と反応したのだと思います。肉とのバランスは悪くないと思いました。

 しかし!

 課題がありました。

というか、どうも、良くなかったね、ということがありまして、それは・・・

①肉以外の具が甘過ぎてしまう。

②煮詰まると、やはり甘過ぎてしまう。

・・・結果、上出来というわけには、行きませんでした。

 この砂糖で、塩梅の良い割り下を作るのは、結構難しいことが、わかりました。

 でも昔の砂糖は、今ちんやが普段使っている精製糖ではなかったわけで、今後の方向性としては、「生なり糖」のような糖も研究していかないといけません。

 ちょいと時間がかかりそうです。続く。

 

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて452連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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