お決まりでしたら
入りにくい、という御指摘をいただくことがあります。そして、その入りにくさについては身に覚えがあります。
すき焼き「ちんや」のことではありません。精肉売店が、入りにくいようなのです。
「ちんや」の精肉売店は、雷門通りに向かって、ドアを完全に開放していて、入り口付近に人はいません。つまり店舗の造作は非常に開放的です。しかし、入りにくいのです。
それは、何故か。
すぐに接客してしまうからです。
「ちんや」の売店のスタッフは下手に真面目で、悪気はなく、お客様が見えたら、すぐに接客しなければ、と思っているようです。
最初から、買うものを決めて来ていて、一秒でも早く買い物を済ませたい、と思っておいでのお客様には、それで勿論良いのですが、そういう方ばかりではありません。
置いてある肉に興味があって見てみたいと思っているものの、今日買うかどうかわからない、という状況の人は、すぐに接客されたくありません。
どうも、「ちんや」の売店のスタッフは、その辺の頃合が上手とは言いがたいらしく、自由に放っておいて欲しい方に向かって、ずんずん近づいて行ってしまうらしいのです。
そしてさらに、
「お決まりでしたら、承ります」と申しますことは、実質的には、
「早く決めてくれよ」
「まだ決まらないの!」と言っているのと同然ということになります。
後者のタイプのお客様の時は、むしろすぐに問答せず、いつでも声をかけられる距離に中に入りつつも、あえて視線は外して、別の用事でもやっているのが正解です。
よく洋服の小売店では、販売スタッフが陳列している服をたたみ直したりしていますが、あれがそうです。
でも肉屋の場合、肉をたたみ直すわけにはいかないですね。
この点は課題ですね。
追伸
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて438連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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