「あとご飯」論争

 このブログの4/20の号にも書きましたが、カリスマ靴職人・末光宏さんを講師として「ちんや」に迎えて、靴の勉強会を開催し、その後で末光さんを囲んで、すき焼き懇親会をしました。桜鍋「中江」のN社長、「駒形どぜう」の若旦那W君、料亭「きよし」(墨田区向嶋)のA子女史などが参加してくれました。

  なごやかに靴談義をしつつ、鍋を食べ進めていく内、「ではそろそろご飯を」ということになりましたが、桜鍋「中江」のN社長だけは、出されたご飯に手をつけません。「?」と思ってみていると、「住吉さん、タマゴもらえませんか?」とN社長。

「え?すき焼き終わったのに、まだタマゴ要るんですか?」「ええ、だって「あとご飯」やりたくなっちゃったもんですから。」とN社長ニヤリ。

 「あとご飯」とは、「中江」さんのホームページによると、以下の通りです。⇒「鍋の残り汁に玉子を入れ、ふんわりと仕上げ、その玉子をご飯にのせて玉子丼のように食べるのが「あとご飯」です。肉や野菜のうまみたっぷりの玉子は、桜なべを食べた後にしか味わえない格別な味です。「中江で一番美味しいのは、あとご飯」という評判も立つほど・・・(後略)」

  なるほど、「中江」名物の「あとご飯」を「ちんや」でも試そうという作戦でしたか。

「ちんや」では、ご飯は、自家製の牛佃煮とみそ椀と共に召し上がっていただくことにしているのですが、そう言えば、「ちんや」でも「あとご飯」を試みるお客様がたまにおいでです。「中江」さんの影響でしょう。

 私としては、ずっとすき焼きを食べ続けた後は、何か食い味の違うものの方がよかろう、と思って、ご飯は上記の方式にしていますが、お客様が、「同じ食い味でも良いから是非」というのなら、それはそれで、その方の味覚ですので、まあ、やっていただけば結構、と思っています。

  そう話すと、今度は「駒形どぜう」君が、「ウチにも、そういうお客様がたまにおいでですね。でも、ウチの鍋は、「ちんや」さんより、ずっと小さいから焦げ付きやすくて往生するんです。今日のNさんみたいに、そろそろ鍋に入れて、丁寧に溶いてくれれば良いんですけど、タマゴを勢いよくドバっと入れて、噴きこぼす方がいらして、あれは困りますね。」

  その程度のこと気にするんなんて、天下の名店が、ナニ小さいこと言ってんの? とお思いの方には、私よりキョーレツなダメ出しをさせていただきます。どぜう屋さんは、永年使い続けてきた、鍋をそれはそれは大事にしています。「蒸気機関車の動態保存」とか聞きますが、鍋屋の鍋も、言ってみれば、「動態保存」のようなものです。丁寧に洗って、焦げや汚れをとり除き、錆びないように処置します。この時焦げが完全にとれていないマズいのです。

  皆さま、どぜう屋さんで「あとご飯」をする時は、何卒、鍋にご高配を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

  「あとご飯」の正しい作り方は、こちらです。「中江」の女将さん(=N社長令夫人)が肖像権フリーの顔出しで教えてくれます。皆さん、このページを印出してから、どぜう屋へ向かいましょう(?)

  ちなみに私は、どぜう屋で鍋が終わった後、残った割り下でネギを煮て、それをご飯に載せて食べるのが好きです。ただし、代金フリーのネギを利用するわけなので、分量は遠慮して・・・注文します。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。