「すき焼きのタレ」
先日、こんな電話がかかってきました。「取材の電話なんですけど、すき焼きのタレについてお話しをうかがいたいと思いまして・・・」
? すき焼きの、タ・レ?
ここでいきなり、受け売りいたしますが、全国調理士養成施設協会が編集した「改訂 調理用語辞典」によりますと、垂れ(タレ)とは、
「主に醤油や味噌に味醂、砂糖などを合わせ、煮詰めてやや濃度をつけたものだが、用途によりいろいろな種類がある。かば焼きや照り焼きなどのように材料につけて焼いたり、鍋料理や鉄板焼などに添えたりする(後略)」です。
そうです。「鍋料理に添えたりする」するのが垂れでして、しゃぶしゃぶの垂れを垂れとよぶのは、正解ですが、すき焼きの鍋の中に入っている液体は、垂れではないのです。少なくとも、「ちんや」では。
では、その液体を何と呼ぶか、ですが、「割下」と言います。
わ・り・し・た です!
ここでまた、受け売りいたしますが、割下とは、
「割り下地のこと。鍋料理に用いる味を調えた煮汁のこと。だしに醤油、みりん、その他の調味料を混ぜ合わせて煮立てた汁。(後略)」=つまり、あの鍋の中の液体のことです。
ちなみに、私は毎朝出社すると、割下に迎えられます。私・住吉史彦は、(一応、)すき焼き屋の主なので、割下の味を見るのが日課なのです。朝一で、その日に使う割下が、口径5cmほどの小さな透明の猪口に入れられて、私の帳場の前に置かれていますので、それをペロペロとなめつつ、メールやブログのチェックをします。実は今現在も、そういう状況です。
ところが、です。「焼肉のタレ」で有名な、大手食品メーカーのEバラ社さんが、「すき焼きのタレ」という製品(瓶詰め)を売り出したので、「ちんや」でもお客様が「お姐さん、すき焼きのタレちょうだい!」などと嘆かわしいことをおっしゃるようになってしまいました。
そこで、「ちんや」にご来店の際、「住吉さんのブログを読んで習ったんだけど、すき焼きの鍋の中に入っている液体は、垂れでなくて、割下なんだよね!」と言った方に特典をつけます。
<特典=「ちんや」の仲居が、冷ややかな表情で「常識ですね」とお返しすること。>
ひひひひ。あ、しまった! また、ひひひひを使ってしまった。他のキャラも育てて使わねば!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。