困った質問
私の店「ちんや」の「お客様に聞かれて困った質問」収集委員を任命しました。そういう委員がいるのです。何をする委員か、と申しますと、お客様から聞かれて、答えられずに困った質問をメモしておき、週に1回月曜日に提出するのが仕事です。
例えば、「浅草に、ほら、電気何とかっていう名前のカクテルを飲ませる店があったよねえ。何ていう店だっけ? 教えてよ!」というご質問には「それは、デンキブランという名前の御酒で、「神谷バー」という御店で出しています。」という回答をつくり、委員本人に答えを出すだけでなく、従業員全員に配布しています。
委員には、新人を任命しています。ベテランは任命しません。ベテランはお客様の対応に慣れていますから、お客様のご質問に対して、正解を出せなくても大勢に影響のない場合は、一生懸命調べて回答するより、むしろ、誤魔化す技術を使います。それがベテランの味ではあるのですが、良くないところでもあります。
例えば、「戦争中は「ちんや」さんはどのように営業していたんですか?」というような昔話しに関する、質問が頻繁にあるのですが、これに正確に答えられなくても、大勢に影響はありません。「先々代(=住吉史彦の祖父のこと)が生きていれば、お答えできるんですけど、しばらく前に死にましてねえ。先代(=父のこと)は健在なんですが、戦争中は、学童疎開で、東京に居なかったらしいんですよ。」という風に誤魔化しておけば、とりあえずOKです。ベテランならそうするでしょう。
それにお客様ご本人も、「戦争中に「ちんや」がどのように営業していたか」ということについて、本当に深刻な関心を持っているかどうかわかりません。75歳〜80歳位の方がそういう質問をされたのなら、深刻な関心をお持ちかもしれません。しかし、毎年3月10日前後になると新聞やテレビで東京大空襲のことが大きく採り上げられますから、それが念頭にあって、ポッとそういう質問が出てきただけの場合もあります。聞くだけ聞いてみよう、くらいの感覚かもしれません。だから、正確に答えられなくても、大勢に影響ないと考えることができる場合が結構あります。
ベテランになると、その当たりが、自然とすぐ判別できるようになりますから、大勢に影響ない場合は、誤魔化して手間を省きがちです。ところが、新人だと、そういうことは考えず、素直に「聞かれて困った質問」を収集してくれます。そこが良いので、収集委員に任命しています。後輩が入社するまでが任期です。
「ほお、戦争中に「ちんや」がどのように営業していたか。そりゃ、知らないよりは、知ってた方が良いに決まってるよ。 で、どういう風に営業してたの? 教えてよ!」
うーん、それはブログに書いてしまうとつまらないので、ご来店になった時のお楽しみ、ナ・イ・ショということで、ヨロシクお願いします。
「また、書いてしまうとつまらない、かよ。 ホントに住吉は意地が悪いなあ!」
いやあ、恐縮ですねえ。このブログでは、「意地悪キャラの住吉」が確立しつつありますから、当分の間、このキャラ設定の変更は無しで行こうと思ってるんですよ。ひひひひ。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。