ビールより なんとか
4/15、浅草料理飲食業組合の研修会で、アサヒビールの守谷工場を訪ねました。この工場は、平成3年に竣工したのですが、私は竣工直後に訪問したことがありまして、2度目の訪問です。ですから、実は、行く前には全くワクワク感がなくて、「業界のおつきあいだから」というだけで参加を決めました。
守谷工場はアサヒビールの工場の中では、3番目に新しく、本格的な見学コースを備えた最初の工場です。ホテルのロビーのように快適な見学コースがあって、赤い制帽が可愛い、ガイド嬢もいます。でも、実は、だからこそ私にとっては、再度訪問する意欲がわかない工場でした。立派すぎて、同じ敷地内にいるのに、見学者が造り手の人間からとても遠い感じがするのです。我々中小企業人にとって、こういう工場は「ひゃあ、スゴい近代的ですね、恐れ入りました、へへー。」で終わってしまうのです。造りの現場にいるリアリテイーがほとんど感じられなかったのが、前回の見学でした。
今回の見学も、どうせそのような次第だろうと思って守谷(茨城県)へ向かいましたが、そういうこっちの思いを知ってか、アサヒの吾妻橋支店さんは特別プログラムをご用意くださりました。
ホテルのような見学コースが終了した後、「それでは、これから従業員用スペースにお入りいただきます(!)」と声がかかりました。これが、本当に従業員用スペースでして、本日の出勤者シフト表(もちろん従業員さん方の実名!)を掲示したパネルの横を通過して進んでいきます。その間副工場長氏がつきっきりで、説明してくださいます。正規の見学コースは静かで快適ですが、こちらは稼動している機械のすぐ横を歩くので、轟音が響きます。副工場長氏、説明を絶叫。
やがて進む内、アルコールチェック機というのを発見。ビールのアルコールをチェックする機械はありません。出勤してきた従業員の、体内のアルコールをチェックする機です。前夜に深酒した者を検知するのだそうです。ひえー。ごくたまに、本当に検知されて、作業に加われない人もいるとか。「そんなの検査されたら、俺なんか、週に1回くらいはひっかかるな」と浅草のK社長。「嘘つけ! キミは3日に1回はひっかかるよ!」と別の社長。まだ飲んでないのに、楽しくなってきました。
従業員用スペースを見学させていただいた後は、醸造部長氏も参加しての、質疑応答タイムです。いろいろお尋ねする中で感心したのは、国内に何箇所もある、各工場のスーパードライを相互に点検して、評価しあっているというところです。もちろん、人間が自分の舌で点検するわけです。「味覚だけで、そのスーパードライがどこの工場の産かわかるんですか?」とお尋ねすると、「そりゃ、たいていわかります。でも、一番判別に迷うのは、実は、自分の工場で作ったドライなんですよ。よそが作ったのは、簡単に判別できるんですけどね。」
うーん、大工場・大メーカーでも、最後の最後は人間なんだね。とても有り難く、勉強になりました。
さてさて、見学の後にやることはもちろん、決まっています。それは、宴会!じゃなくて試飲会です。醸造部長氏が選んだビールを、「樽生・注ぎ方インストラクター」氏が注ぐのですから、マズかろうハズはありません。いざいざ、と勇んでいると、さきほど来、我々を案内してくれた、赤いお帽子のガイド嬢が、「それでは、私はこちらで失礼いたします。」と帰ろうとするではありませんか。
「あれ、お姐さん、なんでもう上がっちゃうの? 一緒に飲もうよ!」と声をかけると、
浅草からずっと同行して来て下さった、吾妻橋支店長氏が、
「チョ、チョッと、住吉さん、彼女はまだ勤務時間中なんですよ。」そう言う支店長氏の目が笑っていなかったので、それ以上しつこくするのはやめにしました。
やだなあ、支店長、冗談ですよ、冗談。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。