選択と集中

「100年経営研究機構」さんが、コロナ危機を老舗企業の対応をテーマに研修会(ZOOM研修会)を開催されました。
私は5分間で最近の様子を報告するようにと依頼されましたので、以下のように申し上げました。
(以下発言内容)
住吉と申します。東京の浅草ですき焼き屋を経営しております。よろしくお願い申し上げます。早速現状ですが、手前どもは料理屋=外食ですから、当然ひどいもので間違いなく戦後最悪です。実は私はピンチは初体験ではなくて、2001年にBSE問題を経験しました。あの問題も病気の問題でして「牛肉を食べたら死んじゃうぞ」とテレビが毎日言っていたわけですから大ダメージでしたが、今回はあの時よりも悪いですね。自分の人生で2001年よりひどい年は多分ないだろうと思っていましたが、甘かったです。
そんな中で救いになったのが、肉の小売り部門があったことです。売上高で言えば外食部門の三分の一くらいの規模しかないのですが、そこが稼働できたので助かりました。総理が緊急事態を出す2週間前に東京の小池知事がニューヨークみたいに東京もロックダウンするかも・・・と発言して、人々がスーパーに殺到するという一幕がありましたが、私はそれをテレビで視ていて、ああ、これですき焼き屋は完全にストップだな、でも逆に肉屋はやらないといけない、やれば動くなと思いました。それで緊急事態中すき焼きは閉めましたが、肉の売り場は開け続けまして、4月は前年を少しだけ上回る売上でした。全体の四分の三は閉まっていますから、それでも大打撃には変わらないですが、ゼロよりはマシでした。
そのように開け続けておりますとメンタルがキツくなってきました。世間の雰囲気がギスギスしてきて、スーパーの店員さんがカスハラに悩まされているという話しが聞こえてきました。そうなったら現場のメンバーが可哀そうです。何か、メンタルが気分良くなる方法はないかとずっと考えて、ある日思いつきまして、それは「医療関係者応援割引」でした。身分証か名刺を出して下されば半額にしました。
医療関係者に近寄りたくないとか、汚い物扱いするとか、言語同断と私は思っておりましたので、それを形にしましたら、お医者さん・看護婦さんが、ありがとう、ありがとうと言いながら買って下さって、だいぶ気分が変わりました。
お医者さん達はきっと将来帰って来て下さると期待しています。
それから続いてネットの拡散が起きました。店先に手書きの告知ポスターを貼っただけだったのですが、それを撮ってSNSに上げる人が多く、どんどん来客数が増えて、、ついに売場の5月の売上は前年の280%になりました。
もちろん半額ですから儲けはないです。ハッキリ申せば肉を右から左へ流しただけ。でも、それで喜ぶ人もいます。肉の需要不足で、畜産農家さんは在庫が積み上がって大ピンチですから、右から左へ流すのも一つの義務だと思って、応援割引を実施しています(6月15日19時まで)。
弊社以外にも、さほど期待していなかった部門に救われたという話しはチラホラありまして、要するに、「選択と集中」はしない方が良かったかも、「選択と集中」は効率的かもしれないが、安全ではなかったかもという結論になろうかと思っています。
最後に今の状況を「どう捉えるか」ですが、それはワクチンの見込みが私には分からないので、何とも申せません。そこで一つだけ歴史の豆知識を披露して代わりにしたいと思います。すき焼き屋は1880年頃に開業している店が多くてウチもそうなのですが、それは牛鍋ブームがあったからです。流行っていたんです、当時。そして、その同じ時期にもう一つ大流行していたものがあります。なんでしょう?コレラです。1879年には10万人が死亡してます。どんどん人が死んでいる、その横で牛鍋屋が開業してたんですね。料理屋の皆さん、そういうことですから希望はないことはございません。頑張りましょう。終わります。

追伸、
肉の売場で実施している医療関係者応援割引は6月15日(月)19時までです。既に1.100人以上の従事者の皆様にご利用いただき、光栄に思っています。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし本日は3.760本目の投稿でした。引き続きご愛読を。

Filed under: すき焼きフル・トーク,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)